肆拾参 ページ43
見送りは無し。
下手に騒ぎ立てても何が起こるか分からない。
｢ほんまに、気ぃつけろよ｣
｢分かってる。大丈夫やから｣
たか兄ともまたお別れ。
最後にハグして、まだ誰も起きていない静かな旅館を
望くんと一緒に歩く。
少しの間で、しかも目まぐるしい3日間だった。
大事なことをたくさん知れた、3日間だった。
ここに来れて、たか兄に会えて、望くんに会えて…
あの子たちのことを知ることが出来てよかった。
旅館を出るとザッと風が吹いて、周囲の彼岸花が揺れる。
何となくお見送りしてくれてるみたいで。
『ん。乗れ』
｢…うん｣
しゃがんだ望くんの背中にしがみつく。
重くなってないかな、と少し心配がよぎった。
1歩ずつゆっくり歩く望くんは、何を考えてるんかな。
ちょっとでも寂しいとか…思ってくれてたらいいなぁなんて。
そんなこと彼の表情からは一切読めなかったけど。
冷たかった望くん。
でもほんまは、めっちゃ優しかった。
芽にもならなかったこの気持ちは…ここに置いていこう。
『俺が送ってやれんのはここまでや』
鳥居の直前まで進んだ彼の背中から降りる。
始まりも終わりも、彼と一緒だった。
｢ありがとう。望くんに会えてよかったよ｣
『…おう、俺も』
顔を上げたら、泣いてしまいそうだった。
自分で決めたんやから泣くのは違う。
泣いても望くんが困るだけ。
そう必死に言い聞かせていたら、不意に頬が包まれた。
びっくりして反射的に顔を上げてしまう。
クリクリの大きな瞳があたしを真っ直ぐ見つめている。
『絶対…幸せになれよ。A』
低く甘い声。
柔らかい感触がおでこに当たったのち
トン、と優しく肩を押された。
鳥居の向こう側。
あたしの意識はゆっくり、落ちていく。
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はのん(プロフ) - カジャさん» すごいです！1話でもめっちゃ嬉しくて興奮してしまいました！！ありがとうございます！！！ (2022年10月4日 21時) (
レス) @page50 id: eb6042d99a (このIDを非表示/違反報告)
カジャ(プロフ) - はのんさん» 全く考えていなかったため、このように1話のみとなってしまいましたが…リクエスト、ありがとうございました。 (2022年10月4日 15時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
はのん(プロフ) - そんな風に言っていただいて嬉しいです！望くんと濱ちゃんのその後を書いて欲しいです！ (2022年10月3日 18時) (レス) id: eb6042d99a (このIDを非表示/違反報告)
カジャ(プロフ) - はのんさん» 応援ありがとうございました。はのん様の言葉がとても力になりました。その後、というのは望くんサイドでしょうか？それとも夢主と流星とのお話でしょうか？ (2022年10月3日 14時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
はのん(プロフ) - 全部読ませていただきました！終わってしまって寂しいです。もしよければ、その後どうなったかのおまけ的なの書いてほしいくらいです！ (2022年10月2日 21時) (レス) @page49 id: eb6042d99a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カジャ
| 作成日時：2022年9月11日 21時
