肆拾弐 ページ42
最後だと思うほど全ての子供たちが
愛おしく見える。
皆心に大きな傷を抱えているはずなのに、幸せそう。
あたしも向こうで笑えるように生きやな。
望くんがお清めしてくれた最後のご飯を、話している子供たちを
見ながら食べ終わった。
『それ、洗ったら俺のとこ来て』
同じタイミングで立ち上がった望くんに耳打ちされる。
脳に直接響いた声にまたどこかが高鳴る音がして。
今までで1番早く洗い物を終わらせて望くんの所へ急いだ。
『はや、笑 こっちや』
その広い背中についていく。
階段を1番上まで登ったあと、どこから持ってきたのか
梯子を取り出した望くんが天井にそれをかけた。
おいでと手招きされるまま梯子を登る。
望くんが腕を伸ばし、天井を押し上げると
1部分だけ天井が開いた。
着物で少々動きづらいところを手を貸してもらいながら
登った先は、久遠旅館の屋根。
よいしょ、と言いながら望くんは胡座をかくから
真似してあたしも隣に三角座りをする。
｢空、近いなあ｣
『俺のお気に入りの場所』
｢望くんて高いとこ好きよね｣
最初に見たのも鳥居の上。
生前の…あの記憶が関係してるんかな。
『まぁな。誰も来やんし落ち着くねん』
｢そんなとこにお邪魔していいん？笑｣
『ん。お前が俺とこの世界の事忘れんための、思い出作り』
こんなことせんくても忘れるわけないよ。
あなたたちのおかげで戻ろうって思えたんやから。
『もしさ、兄貴に…流星に会ったら言うといてくれん。
俺はそれなりに楽しくやってるからもう気にすんなって』
｢分かった。望くんに似てかっこいい人なんやろね｣
『…お前面食いなん？笑』
｢えっ、まぁ…そりゃイケメンは好きやけど…｣
隣でははっと爽やかな笑い声が聞こえた。
うん。やっぱ笑ってる方がいい。
今まで苦しんだんやから、笑っててほしい。
『なぁ、』
返事をする前に視界が闇に包まれた。
望くんの匂いがダイレクトに鼻に来る。
『頑張れよ。負けんな。無理そうになったら俺呼べ、
夢の中にでも出てきたる』
暖かい。
言葉も、体温も。
あたしはきっと、今日の望くんを忘れない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 153人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はのん(プロフ) - カジャさん» すごいです！1話でもめっちゃ嬉しくて興奮してしまいました！！ありがとうございます！！！ (2022年10月4日 21時) (
レス) @page50 id: eb6042d99a (このIDを非表示/違反報告)
カジャ(プロフ) - はのんさん» 全く考えていなかったため、このように1話のみとなってしまいましたが…リクエスト、ありがとうございました。 (2022年10月4日 15時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
はのん(プロフ) - そんな風に言っていただいて嬉しいです！望くんと濱ちゃんのその後を書いて欲しいです！ (2022年10月3日 18時) (レス) id: eb6042d99a (このIDを非表示/違反報告)
カジャ(プロフ) - はのんさん» 応援ありがとうございました。はのん様の言葉がとても力になりました。その後、というのは望くんサイドでしょうか？それとも夢主と流星とのお話でしょうか？ (2022年10月3日 14時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
はのん(プロフ) - 全部読ませていただきました！終わってしまって寂しいです。もしよければ、その後どうなったかのおまけ的なの書いてほしいくらいです！ (2022年10月2日 21時) (レス) @page49 id: eb6042d99a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：カジャ
| 作成日時：2022年9月11日 21時
