参拾玖 ページ39
翌日。
望くんと一緒に菫の間へ。
崇裕さんもあたしが言いたいことは分かってるようで、
目にはこれまでの優しさの他に少し真剣さも混じっていた。
｢いいねんな？｣
｢はい。教えて下さい｣
もしかしたら記憶を無くすことで
自分を保っていたのかもしれない。
どう足掻いても乗り越えられないのかもしれない。
けど…味方がいると知れた今なら…
｢お嬢、君の名前は…Aや。�霤�A。俺の妹｣
(( A、ここ隠れとき。大丈夫やから ))
(( おいA！何で飯出来てへんねん！))
(( A、お前俺に逆らうんけ？))
頭が割れそうな衝撃。
次々とあたしを呼ぶ…あいつの声。
(( ほんま出来損ないやな！お前も母親と同じか！))
(( 俺が稼いでるから学校行けるんやろが！ 偉そうな口聞くな！))
食器の割れる音。
叩かれ、蹴られ、髪を引っ張られ、物を投げられ、
外に閉め出され。
｢嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ…｣
母親は死んだ。
お兄ちゃんはどこかへ消えてしまった。
残されたのはあたしと、悪魔。
終わりのない暗闇に、それでも耐えていた。
だってあの日お兄ちゃんは…
｢言うたやん…｣
細い目を精一杯垂れさせて泣きそうな顔で言ったんだ。
｢絶対戻ってくるって言うたやん…！たか兄！！｣
そうだ、全て思い出した。
母親が死んで、あたしとたか兄は2人であの悪魔に震えていた。
いつも酒の匂いを漂わせながら帰ってくる悪魔が部屋に近づく度に
たか兄はあたしに隠れさせて立ち向かった。
ボロボロで、怖くて。
それでもたか兄がいたからまだ耐えられたのに、
高校を卒業した後の就職先。
寮に入るねん、とぽつり呟いたあの日のことをよく覚えてる。
金を貯めて絶対戻ってくると言った。
その言葉だけを信じ続けた。
けれど、限界が来てしまった。
耐えられなくなったあたしは寝巻きのまま外へ飛び出して…
そのまま意識を無くしたのだ。
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はのん(プロフ) - カジャさん» すごいです！1話でもめっちゃ嬉しくて興奮してしまいました！！ありがとうございます！！！ (2022年10月4日 21時) (
レス) @page50 id: eb6042d99a (このIDを非表示/違反報告)
カジャ(プロフ) - はのんさん» 全く考えていなかったため、このように1話のみとなってしまいましたが…リクエスト、ありがとうございました。 (2022年10月4日 15時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
はのん(プロフ) - そんな風に言っていただいて嬉しいです！望くんと濱ちゃんのその後を書いて欲しいです！ (2022年10月3日 18時) (レス) id: eb6042d99a (このIDを非表示/違反報告)
カジャ(プロフ) - はのんさん» 応援ありがとうございました。はのん様の言葉がとても力になりました。その後、というのは望くんサイドでしょうか？それとも夢主と流星とのお話でしょうか？ (2022年10月3日 14時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
はのん(プロフ) - 全部読ませていただきました！終わってしまって寂しいです。もしよければ、その後どうなったかのおまけ的なの書いてほしいくらいです！ (2022年10月2日 21時) (レス) @page49 id: eb6042d99a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カジャ
| 作成日時：2022年9月11日 21時
