黒の組織で何が悪い？【名探偵コナン】

Statue ページ42

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顔を歪めると言っても、そんな万人が察せる程歪めたわけではない。
けれど、恐らく察知力においてはそれなりに能力のある私は断定するけれど、姉さんにも気づけた。

『 松田陣平は今、苛立っている 』。
どうでも良い事に気づけてしまうものである。



「お前らは、どうしてそう……」
溜息と共に吐き出されたのは文句だった。
松田陣平は途中で言葉を濁したので、何が言いたかったのかは定かではないけれど。
姉さんが居ない二人きりの間に松田陣平がどんな奴か知るつもりが、逆にあたし達の性格を見抜こうとされている気がする。
だけど、訂正はする。

「あたしは何でもはできない。
それにトーゼン、姉さんも。……けど、敢えて言うなら、それでも姉さんは何でもできる」
身一つで空を飛ぶ事も、杖を振って魔法を使う事も、姉さんにはできない。
どころか、地球上にそれができる人間が数える程も居るのかどうか。
あたしのような九歳の純粋無垢な少女としては、魔法使いが居ると信じたいところだけれど。

さて、ならば『何でもできる』というのは。
現時点までに存在する人類ができそうな事を一回で成功しろと言われても、大体は及第点を貰えるだろうという意味で。
どんな超人だ。私は姉さんと……あぁ、あとＮＯＣのあの男。秀一さんしか知らない。
A姉さんが言うには、彼はそろそろ部下の失敗でＮＯＣの疑いをかけられる頃らしいけれど。
かんわきゅーだい。



「･･････なぁ、お前らはなんでそう完璧主義なんだ？」
松田陣平が困りきったように言った。
理由をきかれても困る。
そもそもあたしはカンペキシュギじゃない。

「知らない。あたしカンペキシュギじゃないし」
松田陣平が更に困った顔をした。
あれ以上の困り顔ができるんだ……。
なかなか評価されるべき表情筋じゃないか？


「自分一人で何でも全部やろうとする奴の事を、完璧主義って言うんだよ」
まるであたしが言葉の意味を理解してないみたいに松田陣平が言った。
ちょっとイラッとくる。
大人に見られる必要は無いが、ガキ扱いされたいわけじゃない。
何でもできる事が正義ではないが、できるに越した事は無い。
なんでちょっと否定してるふうなんだ。
あたしの心情はしっかり表情に現れていたらしく、また溜息をつかれた。心外すぎる。

「あたしとA姉さんがそのカンペキシュギだったとして。
それがイコール、アンタが困る事にはならないでしょ」



自分で言って、尤もだと思った。

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