嫉妬2 ページ14
-降谷一 Side-
どれくらい時間が立ったのだろうか。泣き疲れて眠り、目を覚ませば、部屋の中は真っ暗。手探りで電気を探して着け、時計を見れば夜の九時。
一度眠ったことで、気持ちは落ち着き、環奈につきっきりになるのは仕方がない事なんだと冷静に物事を考えられるようになった。しかし、初めて本気で母親に反抗して、環奈がいなくなれば良いと酷い事を言い放った事を思い出して、母親に合わせる顔はなかった。
その時、ドアがノックされたのに気付き、ビクッと体を反応させる。本当に環奈がいなくなったらどうしよう、僕が三人と離れ離れになったらどうしようと、急に怖くなればまた涙が溢れる。
「一」
「え、……お父さん?」
「ただいま、環奈がいなくなればいいって言ったんだって?」
「……………」
「お母さんから聞いたよ」
「……………」
「一が生まれた時は、お母さんが一ばっかりに構うから、俺も寂しかった」
「え…?」
「どんな時も一、一、一。一中心の生活だった。大好きなお母さんが一に取られたんだ、寂しくもなるだろ。男は辛いな」
「……………僕、酷い事言った…僕のこと見て欲しくて…本当は環奈がいなくなって欲しいなんて思ってない。僕も皆と離れたくない!!」
「分かってるよ。俺もついてる。一緒に謝りに行こう?」
「うん…」
自分が生まれた時に、父親も嫉妬していた事には驚いた。格好良くて、頭も良くて、警察官の父親も嫉妬するんだと考えながら、勇気を出してドアを開けてみれば、ドアの前にはしゃがみ込んでいる母親とその後ろに立つ父親の姿があった。
「え…お母さんっ!!」
「一!ごめんね…」
「……僕も…僕もごめんね…いなくなって欲しいなんて思ってないんだ…ただ…」
「うん…お母さんも一がいなくなったら嫌」
目の前にいる母親にびっくりしたが直ぐに、母親が苦しいくらい抱きしめてくれた。我慢しようと思っていた涙が溢れてきた。
「一、環奈も寝たし一緒にお風呂に入ろっか」
「え、いいよっ」
「いいから、久しぶりね?」
「なら、お父さんも…お父さんも寂しいって言ってたから…」
「別に今、寂しいわけじゃ…」
「ふふ…そうだね、寂しがり屋のお父さんと三人でお風呂に入ろっか」
「うん!!」
きっと暫くは環奈につきっきりの生活が続くだろうが母親の気持ちはきちんと分かった。
嫉妬する事もあるかもしれないが、もう酷い事は言わない。2人は守りたいものには変わりないから。
end.
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作者名:ゆきだるま | 作成日時:2018年6月26日 22時