長男誕生2 ページ12
¯
-降谷零 side-
会議中に着信が入った。
事件に関する電話かもしれないと思い、画面を確認すると婦人科の文字。出産予定日が近いことは知っていたので、莉子に何かあった事はわかった。しかし現在は事件に関する重要な会議中であり、私情を挟む訳にはいかず、そのまま会議を続ける。
夜中の3時を過ぎてから、仕事も落ち着き会議室を出るなり婦人科に一度連絡を入れると、もう少しで生まれそうな事を知らされた。出産には立ち会えないが、目覚めたときに一緒にいてあげたい想いから、急いで準備をして婦人科に向かう。
「夜分遅くにすみません、莉子は…降谷莉子は…」
「えっと…あ、降谷さんの旦那様ですね。お待ちしておりました。奥様は今お休みになっておられます。少しだけですが赤ちゃんに会って見ますか？」
「いいんですか？」
「もちろん。ご案内します」
「ありがとうございます」
夜中だというのに丁寧に対応され、生まれたばかりの子供を見ても構わないというので新生児室に案内してもらった。新生児室には生後間もない赤ん坊がたくさん寝ていたが、自分の子供はすぐにわかった。黒い髪の毛の子供達が寝ている中、一人だけ自分と同じ髪色をしていたのだ。
目の前で寝ている我が子に、愛しさが増す。
暫く子供を見つめてから、莉子の病室に案内してもらう。
病室に入ると莉子は静かに眠っていた。頑張って愛しい我が子を産んでくれた。起きたらきちんとお礼を言おう。
いつの間にか寝ていたのか朝、莉子が自分の名前を呼ぶ声で目を覚ます。
少し会話をしたが疲労から弱々しい声の莉子。きちんとお礼と労りの言葉をかけつつ、歩けるまでに体力が戻って来たところで二人で新生児室に向かった。
看護師に声を掛け、新生児室入れば莉子が子供を抱くなり泣いていた。大切そうに抱く姿にすっかり母親だと感じた。
『はい、零さんも…』
「え、俺も？」
「もちろん！お父さんになったんだから」
父親と言われ、まだ慣れない響きだと思いながらこちらもぎこちなく子供を抱く。
思っていた以上に小さく、でも頑張って生きている姿に思わず目頭が熱くなった。
「産まれて来てくれてありがとう」
end.
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作者名：ゆきだるま | 作成日時：2018年6月26日 22時
