【降谷零】走り屋なんて嫌いです Ⅱ (ページ6)

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ランチ1 ページ6

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久しく誰かを《行ってらっしゃい》と見送っていなかったため、こんなやり取りがくすぐったく感じた。彼を見送りドアが閉まったのを確認してから、キッチンに行き朝食の片付けをするため食器を洗った。それが終われば仕事へ行く準備もしていく。

仕事は13時から始まるが、ポアロは10時からとのことだった。11時くらいに行けば大丈夫かなと思い、その時間に間にあうようにポアロへ向かった。歩いて行けない距離ではなかったので歩くも、移動はいつも愛車のバイクなので少し新鮮に思った。

慣れない道を迷子にならないように歩き、ポアロへとついた。まだ8月下旬なので若い女の子たちで賑わっていたが、いつもの光景なので何も思わないままお店に入った。

「いっらしゃいませ、あら、莉子さんでしたっけ」

『はい、仕事行く前にお昼ゴハン食べに来ました』

「いつも、ありがとうございます。空いてる席にどうぞ」

梓に迎えられてまたカウンターの席に座ると、お冷が置かれた。視線を向けたら爽やかな笑顔の彼がいた。今朝の彼とは違った表情におかしく思えた。本当に使い分けが上手何だなと改めて感じる。

「こんにちは莉子さん」

『どうも…このクリームパスタ頂いても？それから、食後に、えーと、このワッフルを』

「かしこまりました」

注文を受けてから忙しそうに料理を作り始めた。ここで料理している姿を見ることはあまりなかった。しかし、料理している姿をよく見ると、《安室透》と《降谷零》ではその差をあまり感じなかった。演じている人は違うが、その中でも共通点を感じる。自分だけが知っている彼の姿で嬉しく思えた。

料理をしている彼を見て、そんな事を考えている時にふと視線が合い、急に瞳が《降谷零》に代わる。そして、意地悪な表情をしたまま口パクで〖見すぎ〗と言われてしまった。

その瞬間、恥ずかしくて思わず視線をそらす。それから何故か、早朝からその瞳をする《降谷零》に抱かれたことを急に思い出してしまった。

(なんでこんな時に…)

色々な考えをぐるくると巡らせながら、出来上がった料理を目の前に置かれた。

「おまたせしました、トマトクリームパスタです」

『ありがとうございます』

「ごゆっくりどうぞ」

作ってくれた彼に、頑張って平然を装いながらお礼を言いつつフォークを手にして食べ始めた。