【降谷零】走り屋なんて嫌いです Ⅱ (ページ49)

今日:30 hit、昨日:1 hit、合計:98,086 hit

新しい家族2 ページ49

¯

-降谷零 side-

莉子に見送られ、一をチャイルドシートに乗せるなり、保育園へ送り届けるために車を走らせた。

「環奈ちゃん早く産まれないかなぁ」

「そうだな。一は沢山お母さんの手伝いをしてるし、いいお兄ちゃんになりそうだ」

「だってお母さん環奈ちゃんのために…お父さんはおまわりさんのお仕事頑張ってるし、お母さん手伝えるの俺だけだもん！お父さんの分まで、お母さんと環奈ちゃん守れるように強くなる」

「…ありがとう、一」

「へへへ」

一の頭を撫でてから保育園の駐車場に車を止めて、手を繋ぎながら保育園の中に入る。最後に保育園に一緒に来たのはいつだろうか、随分と久しぶりだ。言われたとおりに先生にプールカードを渡してロッカーの中に着替えを入れた。保育園を見渡すが、いつもより早い時間で子供たちはほとんどいない。

車の中で一の言葉を聞き、本当に頼もしく育ったと思った。自分は帰る時間も遅かったり、時には帰れない日が続いたりしている。そんな中で二人を守れるように強くなりたいと言われて胸が締め付けられる思いだった。

「じゃあな、行ってきます」

「うん！お父さん行ってらっしゃい」

「今度の日曜日は休みだから遊びに行こう」

「本当に！？やったあ！公園行きたい！お父さんが作ったお弁当持って！」

「はは、わかったよ。約束な」

数年前までは子供はもちろん結婚することすら考えていなかった。莉子と出会い結婚して、子供にも恵まれてとても幸せに感じていた。
　

しかし仕事故に家族と過ごせる時間はなかなかとる事ができていない。

子供と一緒に過ごせる時間は約20年と長いようであっという間だ。その中でも子供達には父親として出来ることを精一杯してあげたいと思うし、それが父親となった自分の役目である。

暫く休めていなかったが日曜日はやっと休みが取れたため、元々家族三人で過ごそうと決めていた。一の公園、弁当というワードを聞いて、ピクニックにでも行くのも良いかもしれないと考える。

二人の笑顔が目に浮かぶ。

多分、家族三人で出掛けられるのも日曜日が最後になるだろう。

来月には《環奈》も生まれるため、今度出掛ける時は家族四人。

幸せな日常に思わず顔が綻んだ。

end