【降谷零】走り屋なんて嫌いです Ⅱ (ページ25)

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半熟ケーキ1 ページ25

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10月下旬。

無事に引っ越しを終えて彼との生活が始まった。お互い仕事をしている身であり、特に彼はサミット前ということで、公安の仕事でかなり忙しいらしく、家にはあまり帰ってこなかっかった。それでも、当たり前ではあるが同棲する前より彼に会える頻度はずっと増えている。

そんな慌ただしい日常の中で、珍しく彼が1日休みをもらってきた。そのため、今日は二人でゆっくり眠り、ゆっくり朝食を食べて、のんびりと休日を過ごしている。自分達がずっと憧れていた日常を今送っているわけだ。

「莉子、今日はポアロで出すケーキの試作品を作りたいんだが、手伝ってくれないか？」

『構いませんよ。私は何をすればいいですか？』

「試食とか」

『その役目いります？』

「重要な役目だろ」

ソファに座りテレビを見ていたら、バイト先であるポアロで出すケーキを作りたいと言ってきた。理由を聞けば、ポアロで出しているケーキが溶けてしまったらしい。理由はコナンが突き止めてくれているらしいが彼は溶けないケーキを作りたいとのこと。試食係りを受け持ち、彼がケーキを作っている姿をカウンターテーブルの椅子に座りながら眺めていた。

あれから何度も彼の作る料理を食べてきたが、どれも舌を巻くくらい美味しいのだ。こんなに腕がいいのに、自分の平凡な料理も美味しいと食べてくれる優しさに、頭が上がらない。

生地を焼き始めると、甘いいい香りがしてきた。彼がつくってくれた朝食を食べたばかりというのに小腹が空いてきてしまう。生地を焼いているときにも、生クリームの準備に取りかかっていた。空き時間も有効に使っており抜かりがない。

『どこで料理覚えたんですか？』

「独学だな」

『独学？！』

コナンから最近聞いた話、彼は料理はもちろん、ギターも弾けて、テニス、ボクシングに、ピッキングテクニック、かなりハイレベルなドライブテクニックを持っているし、爆弾も処理できるらしい。

そんなハイスペックの彼と比較して自分の平凡さに参ってしまう。しかし、彼はそんなことを気にするような人ではないことは重々承知している。それが彼の素なのだ。

『安室さんじゃなくて、降谷さんでお菓子を作っているのは新鮮ですね』

「変なこと言うんだな」

『変じゃないです。本当のことですよ』

何気ない会話を交わしつつもケーキが徐々に完成していくのがわかる。早く食べてみたいという気持ちに襲われながら、ケーキが完成するのを大人しく待っていた。