【降谷零】走り屋なんて嫌いです Ⅱ (ページ11)

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温もりページ11

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仕事へ向かった彼を見送り、いつからあんなに大胆になったのだろうかと思いつつ最初に触った項のホクロに触れた。こんなところにホクロがあったのかと顔を赤くして、気持ちが落ち着いたところで彼の車を移動するために鍵を開けて運転席に乗り込む。今まで気にしていなかったのだが、車内は彼の匂いに包まれていた。エンジンをかけて、サイドブレーキを下げ、ハンドルとギアを握り、クラッチ、アクセルを踏み込む。何気ない動作なのに一つ一つ動かしていく度に彼の事が頭に浮かぶ。

(絶対にさっきのせいだ…)

こんなに意識してしまうのは先程の彼の行動のせいだろう。作業場まで車を運んでからもう少しこの空間に居たくて両手でハンドルを握ったままハンドルに額をくっつける。

(私って変態だなぁ…でも、落ち着く…)

こんな時間なので作業は明日にしよう。傷の修理と、点検作業等で明明後日には作業が終了して彼に引き渡せる。それまではこの車内で彼の温もりを感じてよう。

3日後、無事に車検や修理を終えることができた。しかし、あんな大胆な行動に出てしまったのに、周囲に噂されることはなかった。もしかしたら、彼はわかっていてあんな行動に出たのだろうか。そうなればもう確信犯である。

彼が来るを取りに来るまでの間に、車を念入りに磨く。そして、車内清掃。車内の埃だけでなく、汚れやマットも同様に綺麗にしていった。そこまで注文はされてないのだが、いつも彼を乗せて、傷ついても頑張って走ってくれるRX-7を少しでも労ってあげたかった。

(いつも零さんを乗せてくれてありがとう。お疲れ様…)

車内清掃をしている時に、インカムにて彼がきた事を事務員から告げられた。女性事務員からで、インカム越しでもわかるとても嬉しそうな声だ。そろそろいいかと車内から出て店内へ向かう。

「こんばんは。車は大丈夫でしたか？」

『大丈夫ですよ。次はありませんけど』

「次はないんですか？」

『ないです。何もない状態で二年後の車検通してくださいね』

「…最善を尽くします」

車検や修理の詳細を説明し作業場にあるRX-7の所へ案内した。すると、RX-7を見た彼が目を見開いて驚いた。

「すごいですね、傷だけじゃなくて車内も清掃してくれたんですか」

『いつも頑張って走ってくれるRX-7を労ってあげたくて』

「いつもありがとうございます。大切に乗ります」

彼は目を輝かせながRX-7に視線を向け、ボンネットを愛でるように指先で撫でた。