【安室透/降谷零】走り屋なんて嫌いです Ⅰ (ページ47)

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安堵2 ページ47

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-安室透 side-

観覧車事故から一週間弱たち、ようやく事件も終息に向かい始めた。何十日ぶりかの休暇を与えられて深夜帰宅する。疲労から、ネクタイを取りボタンも何個か外してそのまま眠ってしまった。

昼前に目を覚ませば、そのままシャワーを浴びるため浴室へと向かった。本当であれば、莉子と過ごすはずだった休日。予定が大幅にずれてしまったので、また予定を組み直さなければならない。

そして、バタバタしていて忘れていたが、車検が本当に切れてしまいそうな事を思い出す。車も傷ついてしまったので莉子の職場に持っていき車検と修理をお願いしようと考えていた。

莉子に会うのはいつぶりだろうか。連絡を入れようかと思ったが、仕事中だと思ったので、アポ無しで行こうと思い、シャワーを終えてから早速準備をして莉子の職場へと向かった。

米花自動車へとくれば、整備士であろう人達が忙しそうに仕事をしている。莉子の姿が見えなかったので、今日は休みなのだろうか、そんな事を考えつつ事務員に要件を伝え応接ブースに案内してもらった。

少しして人の気配を感じて視線を向けるとそこには、会いたくて堪らなかった莉子が、驚いた表情で此方を見ていた。《安室透》になって要件を伝えると《零》と言いかけて慌てて《安室さん》と言い直す。莉子の目は赤くなり、涙を堪えているのか唇を噛みしめ、喉の奥から絞り出すような声で《修理はしない》と言われた。あくまで、整備士と客の関係を健気に貫く莉子。

抱き締めたい衝動に駆られるが今はまだ我慢だ。なんとか理性を保つ。

事務的なやり取りを終えて、車検の日程や車の引渡日が決まれば、別な書類を取りに一度応接ブースを出ていった。

持っていた手帳を千切り《仕事終わり会えないか？》と記したものを、莉子が戻ってくるなり、手渡せば自分の目を見てコクコクと頷く。どうやら大丈夫なようで、自分も一安心した。

(仕事終わり迎えに来るか…)

「じゃあ、莉子さんよろしくお願いします」

『はい、次こそ傷つけたら他を当たってくださいね。私は対応しませんので』

「ふっ、肝に銘じておきます」

莉子も落ち着いたようで、最後はいつものやり取りができた。《次は直さない》《次は対応しない》、こんなやり取りをいったい何度行ったのだろう。莉子と過ごす時間は極端に少ないが、莉子との時間が少しずつ非日常から、日常へと変わっていくのを感じ始めていた。