安堵1 ページ46
¯
彼との約束がキャンセルとなってしまった2日間は、特にすることもなかったので、両日ともツーリングに出かけた。出かけたい気分では無かったが、家に籠もっていても最悪な考えに押し潰されそうになるし、テレビを付けても観覧車事故のニュースばかりやっているため、気が滅入ってしまいそうだった。
観覧車事故はとある組織が関わっていると噂されており、スパイとして潜入する彼も関わっているのだろう。そう感じていた。
ツーリングに出かけると、涼しい風に当たり少しは良い気分転換になった気がした。1日目は海、2日目は山へと出かけた。2日目、愛車を止めて高台から景色を眺めてから、彼と二股をしている愛車という名の恋人をそっと撫でた。
(いつも私と一緒にいてくれてありがとう)
心の中で軽く微笑みながら愛車にお礼を言い、気分も落ち着いたため、帰ろうとバイクに跨った。
連絡がなく、彼の安否がわからないまま一週間が経とうとしていた。いつも通り米花自動車で仕事をしており、たまたま車検や自動車修理などが幾つも重なり、いつもよりも忙しい日々を過ごしていた。
仕事が立て込んでいると、考える余裕がない程に熱中してしまうため、この忙しさは正直ありがたかった。
目の前の仕事が一段落た時、事務員から車検のための見積もり依頼と、車の傷を直したいという客が来たことを無線にて伝えられた。
『今から行きます』
目の前の仕事が終わっている自分が対応しようと、返事をして作業場から店内に移動する。必要な書類等を手にして応接ブースへ向かった。
「こんにちは、莉子さん」
『れ、……あ、安室さん…こんにちは』
「すみません、また車傷つけてしまいまして、その修理と車検お願いできますか？あと一週間くらいで切れてしまうので」
目の前にいる彼に驚きしどろもどろになってしまう。この二週間、何も無かったかのように振る舞う彼。
無事で良かった。安心した。来るなら連絡が欲しかった。会いたかった。また車を傷つけたの？何度目なの？
彼を見ながら色々な感情や気持ちが押し寄せる。目頭が熱くなるのを感じながらも、今は整備士と客という関係で対応しなければならない。涙を堪えるため、唇をキツく噛み締めながらテーブルを挟んだ彼の前の椅子に座る。
『また…傷つけたんですか。…もう、修理しませんって…言いましたけど』
「すみません、また無茶しちゃって」
言葉がうまく出てこない。
(ああ、無事でよかった)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 205人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆきだるま | 作成日時：2018年5月6日 19時
