【安室透/降谷零】走り屋なんて嫌いです Ⅰ (ページ35)

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不器用2 ページ35

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-江戸川コナン side-

(やべっ、多っ！)

莉子を連れてポアロへ入って後悔した。そうだ、今世間は夏休み中だ。女子高生、大学生に人気だから、夏休み中に彼女達が集まるのは必然だ。自分達に気付いて、彼が席に案内してくれてたが、表情は特に変わりはない。

席に座ってから、女性たちと彼の会話が聞こえた。隣に座る莉子を見るが、彼同様、表情に変わりはなかった。しかし、莉子はその頭の奥で色々考えているのだろう。メニューを見ていた莉子は、目の前で飲み物を準備していた梓に注文をした。自分も問われたので、いつも食べている物を注文する。

注文を受けて彼がハムサンドを作り始めた。莉子は意識的にか彼を見ようとはせず自分と世間話をする。気になるなら後ろの彼女達と同様に話しかければ良いのにと思うが、それをしないのが莉子らしいと言えばそれまでだ。

「お待たせしました」

「わーい、安室さんありがとう」

『ありがとうございます』

「今日は随分と珍しい組み合わせだね」

「莉子姉ちゃんが、一人で海にいたから連れてきたの」

「ナンパしたってわけか」

「まあね」

「君、本当に小学生かい？ふっ、ゆっくりどうぞ」

彼と軽く話してからハムサンドを一口食べるが、やはりここのハムサンドはいつ食べても美味しい。先程約束したように莉子にハムサンドを渡した。

『コナンくん、ありがとう。………………！』

「どう？……ん？莉子姉ちゃん？」

『これ食べたことあるよ』

「え？そうなの？でも、さっき食べたことないって」

『少し前、朝御飯に作っておいてくれたの。また食べたいって思ってたから、食べられて嬉しいの』

ハムサンドを食べた莉子は、とても幸せそうな表情へと変化した。口に合わなかったのかと思ったが、逆だった。惚気たのだ。ここに来てあまり表情を変えなかった莉子だったので、その表情に驚いてしまった。こちらまで恥ずかしくなる。

(だってよ、安室さん)

表情は変わらないが、聞き耳をたてているだろうと思い、莉子に気づかれないように視線を送りニヤニヤした。目が合った彼は肩をすくめ、少し困った顔をする。でもどこか嬉しそうにしていた。