scene.50 ページ1
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大学2年夏____
“キム・ソクジンがスカウトされてアイドルになるらしい”
そんな噂が駆け回る
俳優じゃないの?アイドル?なんて声はザラにあった
正直私も「ソクジンくんが、アイドル…?」と思ったほどで。とても美青年だけれど、キラキラダンス踊って歌ってる彼は想像できなかった
そんな中私はと言えば___
「今度のコンペ。あなたも出すわよね」
「……。」
私はコンペはあまり好きではなかった。ただアーティストとして生きていくためには、受賞歴は必要なもので。
「これで最優秀賞を獲ったら確実にアーティストとして生きていけるのよ!」
「…はい、」
「それで、これ。目を通しておきなさい。」
「これは__?」
手渡された茶封筒
「資料よ。」
「…資料?」
「審査員の資料」
「え……?」
「いい?この世の中は勝ったもん勝ちなの。あなたの実力なら確かにいいところまで行くでしょう。でもそれじゃダメよ。私は貴女の才能と未来を買ってるの。
何がなんでも一位を勝ち取りなさい!いい?そうすれば貴女の好きな映像を一生仕事にできるわ___」
《天才児》と最初に呼び出したのも、この教授だった。周りがそれに便乗して私をそう呼んだ。
私は確かにこの人に師事したことになるわけだから、当然私の受賞歴は彼女のキャリアにも反映されるわけで____
「…利用、されてる、だけ…」
私は利用されてるだけ。
抱えた茶封筒を持って外に出ると、ざぁっとバケツをひっくり返したように雨が降っていた
「…傘、」
忘れちゃった。
とぼとぼと歩いて、裏庭のベンチに腰かける。茶封筒にはシミができ、しまいには暗い色に変色した
「…ど、して、…」
天才だと言われ、孤独になった。天才だと畏怖の対象になり、天才だから常にいい作品を生み出さねばならなくなった。
「…う、…っ」
カメラが好きだ。映像が好き。生きてる世界の美しさを、ただ感じていたかった。
「…ふ、…っ、ぅ」
もう、やめようかな…
私はただひっそりと、自分の好きなものを映していたい、
審査員の好みにあった作品を作るくらいなら、そんなのない方がいい…
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雨の降りしきる中、涙を流して目を閉じ、天を仰いだその時_____
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mila.(プロフ) - xts9cp5sUjUGJbjさん» 感想ありがとうございます。私も実はこの作品が気に入ってるんです笑 この作品を愛読してくださり、ありがとうございました! (2021年10月5日 17時) (レス) id: 1554483eb9 (このIDを非表示/違反報告)
xts9cp5sUjUGJbj(プロフ) - とても…とても綺麗なお話でした。作者様の言葉選びなどがとても魅力的で、物語に吸い込まれるようでした。とても素敵な作品に出会えて幸せです。これからも応援してます、 (2021年10月1日 2時) (レス) @page50 id: a176559be4 (このIDを非表示/違反報告)
mila.(プロフ) - ももさん» ももさん、嬉しいコメントありがとうございます。「素敵な時間」を提供できたとしたら本当によかったです。これからも一緒にバンタンを応援できたら嬉しいです (2021年9月5日 14時) (レス) id: 488172c492 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - 美しい文章、と素敵な時間をありがとうございます。 (2021年8月30日 12時) (レス) id: 7a7f3f1d7f (このIDを非表示/違反報告)
mila.(プロフ) - まる汰さん» まる汰さんコメントありがとうございます。書いてから随分経ってもなおこうして読んでもらえて嬉しいです。ジンくんの宝石箱、、美しい表現をありがとうございます。なんだか染み入ります(笑) (2021年6月28日 20時) (レス) id: 488172c492 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mila. | 作成日時:2019年11月29日 12時