誰も「男」だなんて言ってません 3 【BTS】

ep.143 ページ44

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ジン side


激震が走ったのは、その日の午後のことだった＿＿＿＿



「お？なんか騒がしくない??」

僕は作業室からそっと顔を出すと、バタつく事務所内。なんだ？と顔を顰めていると、廊下にユンギが茫然と立ち尽くしている


「ユンギヤー、何が起こってんの？」
「っ、ヒョン……！」
「うわ!! 顔色悪いよ、大丈夫？ちょっと休んで＿＿「Rouが……！あいつが…！」…え？」


不思議なユンギの様子に妙な予感を察知して、廊下を駆け回るスタッフの1人を呼び止める


「一体何が起きてるのですか？」
「ジンさん！それが…っ！」

真っ青な顔のその子を先輩スタッフが
「おい!!!急げ！コッチに手を回せ！」と呼びつけた


「??」



＿＿＿＿なんだ、一体どうなってる？




「ユンギ。ユンギは知ってるんでしょ、何が起きてるの？」
「…Rouの正体が何なのか、って話はよく騒がれてましたけど完全に突き止めた週刊誌は今まで無かったですよね」
「え？ああ、うん、そうだね」
「…それは少なからずうちの事務所の力もあったと思いますけど」


性別を明かさずデビューし、一躍時の大スターに成り上がった1人のアイドル


その正体というか、過去を知りたいのはファン心理としてもあるし、何より秘密が多ければ多いほど人はその真理を暴きたくなるものだ


「もしかして…Rouの何かがバレたの？」
「……はい。みたいですね、完璧にすっぱ抜かれた形で、嫌な感じに＿＿＿」


ユンギは真っ青な顔で怒りを鎮めるように拳を握り締めた



「っ、まさか…！」


まさか




“女のコ”だとバレたの？




「…まぁ、それだけならいいですけどね、」
「ど、どういう意味!? 他にバレて困ることなんてないっていうか、むしろそれが一番バレちゃいけないんじゃ…?!」
「別にRouは性別を明かしてないだけで、女だとも男だとも言ってない。受け取る側のコッチが、勝手にあいつを男だと決めつけてただけでしょう…？」

ユンギの言葉に、確かに、と思う

「じゃあ何がそんなに問題になってるの？」
「＿＿＿＿Rouの生い立ちが、捏造されまくってるってことですよ」

「……は、??」


捏造？生い立ちを？


「Rouには父親がいない。母親は世界を飛びまわるエリート。祖父母に育てられた。そして芸能界入り。それだけでも格好の悲劇のストーリーを作り上げるのに最適な条件が揃ってると思いませんか」

「つまりそれって＿＿＿」

「そう。Rouは“母親から虐待されていたんだ”って書かれたんですよ＿＿」

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