62 ページ12
.
その日は、二人で抱き合って泣いていた。
まさか、こんなことになるなんて誰も考えもしなかった。
階段を見つけた時は皆さんを連れて帰れる、って。本当に思ってた
「…っ、A、大学は、…?」
一頻り泣き切った私に、グクくんが鼻をすすりながら尋ねた
「……行きたくない、」
行きたくない、の、
初めてだった。勉強が全てだった私に、学校を休むなんて考えもしないことだった
「…私、ッ、」
う、とまたぶり返す涙に、グクくんが「んもー、泣くなよ、俺まで泣くから(笑)」と私の頭を撫でた
「…考えよう。いつまでも泣いてるわけにいかないよね、」
グクくんが親指で涙を拭ってくれる
「…僕さ、本当なら今一人ぼっちだったかもしれないんだ。
Aを探さなかったら。ヒョンが、Aのことをメモに書き留めなかったら。Aが大学に行ってなかったら。Aが生まれてなかったら___」
「…っ」
「すべては “偶然” じゃない。僕は、Aと出会うためにここにいるんだ、…」
と、思う、と照れたように笑う
「二人っきりになったんじゃない。僕には、Aがいる。…そう思うよ」
私はそっと彼の胸元に頭を寄せて、小さく彼の腕を握った。
「…私も。」
私も
「グクくんがいるから、怖くない」
そう言って顔を上げたら、安心したように笑った。
私はゆっくり彼の頬に手を当てて、それから頬についた涙の筋に、優しくキスを落とした
「…A、っ」
すると今度はグクくんが、私のほっぺに触れるだけのキスをする
「…もう一度行こう。今度はみんな、一緒に帰ってこよう」
「うん、」
「Aのことだから、歩いて来たあの空間の道、覚えてるんだよね?」
「…もちろん、(笑)」
テヒョンさんがどこで倒れたかも、ちゃんと覚えてるよ
そう言うと、「さすが、僕の大事な…」と言って、ピタ、ととまる
「あー、え、っと、うん、親友。そう、大事な親友、」
とグクくんが寂しそうに笑って。だから私もそう笑い返した。
____本当は、薄々感づいている。
私は、 “王” の血族。
「血」を差し出せばこの世界の均衡が保たれ続けることを。生贄など必要なくなることを。
そして父の言う通り、未来永劫、子孫が「血」を差し出し続けねばならなくなると言うのならば、 “王” の血族としての果たすべき義務であると思う
もうこうして誰も苦しまないように
我々が犠牲になるべきなんだ。
655人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
mila.(プロフ) - カホシさん» カホシさんコメントありがとうございます!ちょっと変わった世界観でしたけど楽しんでもらえたなら嬉しいです! (2021年3月28日 20時) (レス) id: 488172c492 (このIDを非表示/違反報告)
カホシ - こんなにお話にハマったのは初めてです!これに出会えて良かったです!! (2021年3月27日 18時) (レス) id: f18e6e17b1 (このIDを非表示/違反報告)
_tunputo_(プロフ) - 処女作でこんなに複雑で作り込まれたお話が書けるなんてすごすぎます……一気に読んでしまいました……。世界観に引き込まれて没頭してしまいました。(笑)これ、ドラマになったらいいのに。なんて思ったり。他の作品も全て好きです。これからも更新楽しみにしてます。 (2020年11月27日 0時) (レス) id: 993cb3d94d (このIDを非表示/違反報告)
mila.(プロフ) - カナタさん» わあ、嬉しいです!もう一つの方も、ちょっとずつですが更新頑張りますので、楽しみにしていただけると嬉しいです(^^)最後までご愛読ありがとうございました! (2019年11月7日 20時) (レス) id: 488172c492 (このIDを非表示/違反報告)
mila.(プロフ) - きょうさん» ありがとうございます!感想嬉しいです!これからも頑張りますね!!ご愛読ありがとうございました! (2019年11月7日 20時) (レス) id: 488172c492 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:mila. | 作成日時:2019年10月28日 9時