八十四、ゴーカートじゃないンだよ!? ページ8
「行くよっ!」
ハンドルを握り、アクセルを踏む。
「安全運転でお願いします・・・」
「ところで、この車は保険と弁護士特約には入っている?」
右折する。
保険は勿論任意も入っているが、弁護士はどうだッただろうと考える。
「まぁいいや。少なからず保険は入ってる筈だろうし」
ミラー越しに潤一郎と目が合えばフッと微笑む。
「なぁに、少し寝ていれば、あっという間に探偵社に着くからね」
その自信はどこからくるのだろうか。
潤一郎は不安で仕方がない。
*
「ねぇ、速度出し過ぎじゃない?」
「緊急事態だからね!」
「ここ高速じゃないンだよ?分かってる?」
「承知してる、さ」
ハンドルを回す。
メーターの針が右へグインと動く。
時間帯が遅い所為もあって周りに車がいないことに感謝している。心から。
*
「ちょおおおおお、前見て!!崖、崖、がけぇえええええー!」
潤一郎が車内で叫ぶ。怪我とかそれどころじゃない。
「緊急事態だからねっ!」
さっきまではまだよかった。高速並みの速度を出していたが百歩、否一万歩譲って。
ショートカットと称して崖を飛び越えようとしている。
安全運転の「あ」の字もない。
何回も止めるように説得(と言うなの絶叫を)しているのだが、Aは止まる気はない。
まだ、Aや潤一郎が物体を浮かせられる異能力者ならいいのだが、生憎二人とも隠密に長けた能力。
これは死んだと潤一郎は悟る。
目から涙が溢れてくる。
生きて探偵社に着けないと本気で思う。
*
・・・奇跡的に生きている。
命があるって素晴らしい!
今なら「貴方は神を信じますかぁ?」と言った怪しげな宗教に勧誘されたら、入ってしまいそうなほど、神に感謝している。
安心してるのも束の間。前に車両が居るにも関わらず、速度を落とさないA。
此の侭だと突っ込んでしまう。
避けようにも対向車線から車が来ている。
「Aちゃん!前見て前!止まって!!」
「行ける!今の私なら!!」
グインッと強く踏む。
Aはブレーキという機能を知らないのか。
「行けるわけないでしょおおお!!ストップ!ストップ!なぁあああ――!!」
・・・もう、嫌・・・。
*
「さぁ、着いたよ!」
ふぅっと一仕事したと言わんばかりに額を拭う。
汗一つ掻いていない癖に。
後ろを見ると潤一郎はグロッキーになっていた。
ゴーカートより酷い。気を抜いたら「オロロロ」と吐いてしまいそうだ。
これは車酔いでない。断じて無い。
「ぜ、絶対に・・・二度と運転させるか・・・」
ボフッと後部座席で倒れた。
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麗(プロフ) - 24ページ 空気を纏う祖母に とありますが話の流れ敵には 祖父 ではないでしょうか? (2021年4月23日 14時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
柚湯(プロフ) - ドットコムさん» おめでとうございます。今年ものっぺり更新ですがよろしくお願いします。 (2019年1月2日 16時) (レス) id: c8fb7ba279 (このIDを非表示/違反報告)
ドットコム(プロフ) - あけましておめでとうございます!今年も夢主可愛いですね! (2019年1月2日 8時) (レス) id: e6a479853a (このIDを非表示/違反報告)
ドットコム(プロフ) - 柚湯さん» 乗り物って自転車以外酔っちゃいますw。コーヒーカップとかヤバイです。 (2018年10月20日 22時) (レス) id: e6a479853a (このIDを非表示/違反報告)
柚湯(プロフ) - ドットコムさん» 私も運転が激しいのは・・・。吐きますね。 (2018年10月20日 22時) (レス) id: c8fb7ba279 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚湯 | 作成日時:2018年3月26日 23時