八十九、大差、小差、一歳差 ページ19
「はい、あーん」
スプーンでアイスを掬い、潤一郎に差し出す。
潤一郎も嫌がらず、口を開けて受け入れる。
普通にイチャコラしてるカップル。
飲み込んだのを確認して、彼女はまた、潤一郎に差し出す。
「・・・Aちゃん。流石にもういらないンだけど・・・」
Aが掬って潤一郎が食べるという行為が何十回も行われている。
基本的にAはお残しが嫌いで、頼んだ物は必ず食べきる主義なのだが、
流石にこの量は堪えたのだろう。
だから、残ったアイスを潤一郎に与えている。
「もう一口頑張って欲しい・・・」
スッとポケットから二つ折りのカードを取り出す。
捲ると最後の一列を抜いてハンコが埋まっていた。
そして、締め切りは今日までだった。
「このアイスを食べきればスタンプが溜まるのだよ!」
潤一郎は納得した。いつもの喫茶店じゃなく、探偵社から離れたこの喫茶店に連れて来られた理由を。
そして今日はよく食べるAに。
「それで、何が貰えるの?」
よくぞ聞いてくれたと言わんばかりに目を煌めかせるA。
「この喫茶店オリジナルティーバッグセットを貰えるのだよ!!
ってなわけではい!」
「ンぐッ!?」
最後の一口を一気に突っ込まれた。
*
「ありがとうね!潤一郎君」
ホクホクした表情でAは紙袋を抱きしめる。
喫茶店から出て、探偵社に向かう。
「本当にいいの?奢ッて貰ッちゃッて」
お会計は全てAが払ったのだ。
ポイント集めのお礼だと言った。
多分そこそこの値段だろう。
「別にいいのだよ。大した値段ではないから、気にしないでおくれ」
サラッと言ってのける。
男としての何かにひびが入る気がした。
「それに、私は君よりお姉さんだからね!」
「ボクと一歳しか変わらない癖に」
口を尖らせる。
Aはムフッと大人びた笑みを浮かべる。
足を止め、ゆっくりと顔を潤一郎に近づける。
思わず屈み潤一郎も顔を近づける。
触れるか触れないかのギリギリでピタッと止まり、
「たった一歳差でも大きいのだよ」
と囁いた。
瞬間、鮮やかな紅が渇いた潤一郎の唇を舐めとる。
「へ!?」
突然の事に目を丸くする潤一郎。
熱がじわじわ来る。
「ん〜。ほんのりバニラに味だね〜」
潤一郎から離れフフッと笑う。
「・・・なンか今までに無いくらい
「あらあら、珍しい。
でも、ダメだよ」
自分の唇を守るようにバツを作る。
クフフッと小悪魔的に微笑む。
完全にAの手の平で転がされる気がした。
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麗(プロフ) - 24ページ 空気を纏う祖母に とありますが話の流れ敵には 祖父 ではないでしょうか? (2021年4月23日 14時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
柚湯(プロフ) - ドットコムさん» おめでとうございます。今年ものっぺり更新ですがよろしくお願いします。 (2019年1月2日 16時) (レス) id: c8fb7ba279 (このIDを非表示/違反報告)
ドットコム(プロフ) - あけましておめでとうございます!今年も夢主可愛いですね! (2019年1月2日 8時) (レス) id: e6a479853a (このIDを非表示/違反報告)
ドットコム(プロフ) - 柚湯さん» 乗り物って自転車以外酔っちゃいますw。コーヒーカップとかヤバイです。 (2018年10月20日 22時) (レス) id: e6a479853a (このIDを非表示/違反報告)
柚湯(プロフ) - ドットコムさん» 私も運転が激しいのは・・・。吐きますね。 (2018年10月20日 22時) (レス) id: c8fb7ba279 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚湯 | 作成日時:2018年3月26日 23時