Bitter Caramel ~tk×ar~ (ページ4)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:27,438 hit

D ページ4

保健室の先生に事情を話すと、おれも隣にいることをなぜか許された。

ベッドに座った彼。側においてある丸椅子におれも腰かける。

「知ってた？フォークってさ、一度ケーキの味を味わうと他の食べ物の味が分からなくなっちゃうんだって。」

「え、そうなの!?」

「辛いとか、苦いとか、酸っぱいとか、感じなくなっちゃうんだって。おれだけ、“甘い”、“美味しい”って感じられるようになるんだって。だから、道端の草を食べようがフォアグラを食べようが、味は同じ。」

「へ、へぇ…不思議。同じ人間なのに。」

「ほんと、不思議だよ。」

「君もさ、同じ人間なのにフォークにだけ甘いって思わせられるって、すごいね。」

「フォークにしか分かんないんだからフォークにとっては不思議かもしれないけど、普通の人間にとっては普通だよ。」

「まぁ、そうだね。」

「うん。…あいつも言ってた。もう一度で良いから、君以外の“美味しい”ものが食べたいって。」

「無理強いしないけど、どんな人だったの？前のフォークの人。」

「…すごく、優しかった。かっこよくて、背が高くて、笑顔が可愛くて…年上だったからそんなに会えなかったけど、帰りはいつも教室に迎えに来てくれて、一緒に帰ってくれた。すごく大切だった。失いたくなかった。だからこそ、いなくなった時、おれの中の何かがなくなった感じがした。その代償は大きくて、一ヶ月くらい学校いけなかった。それくらい…おれの中で、大きな存在だった。」

「…大好きだったんだね。」

「うん。…すごく。」

もう涙は出てない。

「…おれ、君の中で、そのフォークの人みたいになれないかな。」

「なれるよ。だって彼もまぁまぁ人見知りだったし。」

「え、そうなの!?」

「うん。だから意外と似てたりして。」

ふふっ、と笑いながらベッドに横になる彼。

「ねぇ、高木くんもここおいでよ。」

「え…」

「意外と気持ちいいよ？ニトリとかにおいてあるやつっぽい～」