偽物彼女

本当の気持ち ページ34

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ソクジン先輩の居ない校庭を見つめながら
そこに先輩の姿を描く。


あれだけ側に居た先輩の姿を描くのは簡単で



　


『先輩』















その残像を見つめながら




『卒業、おめでとうございます。』





ポツリポツリと











『好きです。』


私の気持ちがこぼれ落ちていった。









　

　



　
　

　




“好き”

ずっと胸の奥、誰にも言わずに閉まって来たその言葉を口に出すと、視界が滲んだ。

　


あぁ、私…泣いているんだ。

そう理解するのに数分時間が掛かった。







　


『泣くほど…好きだったんだ、私。』




涙はあえて拭わなかった。
ただ、自分の感情に任せてスッキリするまで涙を流すのも偶にはいいかもしれない。




　


頰を伝い落ちて行く水滴達と共に


『先輩、好きです』

何度も、気が済むまで私は本当の気持ちを呟いた。




　




　



　

　

　


　
スッキリとした頃には、もう校庭には誰も居なくなっていて、私と職員室の先生位しか居ないんじゃ無いか…そう思う程、周りは静まりかえっていた。



　
　


　



『帰ろう、』
　



1人静かに、そう呟いて
ベランダから出ようと、ゆっくりと振り向いたと同時に


　


　


懐かしい匂いと暖かさにぎゅっと包まれた。




　



　


　
『は…？』


何故だろう。

　
どうして彼が居るのか…

遂に私は自分を抱き締めてくれる、都合の良い幻までも生み出してしまったのか…


そんな事を思考が追いつかない頭の中考えていると





　

　

　


　




「A」


　

彼が小さく耳元で私の名前を呼んだ。

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