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生活感が溢れているこの家。
電気や水道が使えるのか試してみると、問題無く電気は付き、水も流れました。
こんなにもあの頃と何一つ変わらない。
なのにやはりテヒョンオッパは居ません。
1階の部屋を一つ一つ見て回りゆっくりと階段を登り
最後にあの部屋に行きました。
*
扉を開けるとあの時の光景。
グクオッパが私を見つけた時のままで。
床には沢山のぐしゃぐしゃになった私の写真達があの頃と全く同じ状態のまま散らばっていました。
あの時のまま。
まるで時が止まったままかの様なこの部屋に足を踏み入れると妙な気分になりました。
歩く度に音を立てる足元の写真達の音を耳に入れながらゆっくりと部屋を見渡すと
懐かしい物が視界に映りました。
交換日記です。
テーブルの上にポツンと置かれたそれを私は徐に手に取りパラパラとページを巡りました。
懐かしかったです。
彼の字が。言葉が。
どのページを観ても、どの文を観ても、私の事ばかり、私への気持ちばかりで
『テヒョンオッパ、』
思わず唇からそんな呟きが溢れました。
ゆっくりと全てのページに目を通し最後のページに辿り着いた時でした。
上着のポケットに入れて居た携帯のバイブが鳴り、私は日記をテーブルに戻し、携帯を取り出しました。
しかし。
『、え』
ディスプレイに表示されて居る文字は
“ 非通知 ” からで
私は出るのを躊躇いました。
ですが。
一向に鳴り止まない非通知からの着信に痺れを切らし、何秒か後
ゆっくりと通話ボタンを押しました。
*
恐る恐る携帯を耳に当て、声を出しました。
『………もしもし、』
何故か向こうからは何も聞こえません。
『……………グクオッパ?』
『………………ジミンオッパ?』
何一つ聞こえない携帯の向こう側。
怖くなりました。
私の番号を知っている人など、グクオッパとジミンオッパ、そしてバイト先の店長さん
その位しか居ません。
だから。
彼しかいないと
彼だと分かりました。
『…………………テヒョン、オッパ』
その瞬間。
電話の向こう側で、息を吸う音が少し聞こえた気がしました。
しかし。
直ぐに通話は切られてしまい
私は呆然と携帯の画面を眺める事しか出来ませんでした。
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葵(プロフ) - rikurikurikuさん» コメントありがとうございます。お返事遅くなり申し訳ありません。そう言ってもらえてとても嬉しく思います。完全素人です…言葉間違い、可笑しい部分もありますが、楽しんで頂けたら幸いです。 (2021年6月24日 13時) (レス) id: d19507b391 (このIDを非表示/違反報告)
rikurikuriku(プロフ) - 読んで鳥肌が立ちました…。こんなことは初めてです。どの作品も凄い!すごく引き込まれます。素人の方ではないですよね? (2021年6月20日 13時) (レス) id: a0f3b29227 (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - ヨバラズさん» コメントありがとうございます。お返事遅くなり申し訳ありません。その様に言って頂けて有り難いばかりです、ありがとうございます!! (2020年7月9日 16時) (レス) id: 7e4da3a66e (このIDを非表示/違反報告)
ヨバラズ(プロフ) - 一気に読ませて頂きました!言葉一つ一つに飲み込まれるようでした。台詞の少なさがまた、恐怖心や切なさ、喪失感を煽っていてとても面白かったです! (2020年7月3日 1時) (レス) id: 287b2c606f (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - Nさん» コメントありがとうございます。お話楽しんで頂けて嬉しく安心しております!最後まで読んで頂きありがとうございました。また新作の方でお会い出来たら嬉しいです! (2020年6月6日 8時) (レス) id: 7e4da3a66e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葵 | 作成日時:2020年5月10日 23時