１５５話 ページ9
まだ分からないことの方が多いし、頭の片隅にでも置いておこう。
そう考えて今夜は床につくことに。
＿＿＿
午前５時。
それでもやはりこの時間には起床してしまうようだ。
喉が渇いた。
そう思って厨房へ行くと、やはり明かりが付いていた。
ｻｯﾁ「おはよう、A」
ﾃｨｰﾁ「お、Aか。朝早いんだな」
ティーチか。
珍しい。
手には焼き上がる前のチェリーパイ。
『ん、おはよう』
『…珍しいね。ティーチがここに居るなんて』
ﾃｨｰﾁ「ゼハハハハ、俺ァチェリーパイが好きでな」
ｻｯﾁ「これだけは俺も敵わなくてな」
ｻｯﾁ「ティーチの方が上手いんだよなぁ」
『へぇ、いいな。今度レシピ教えてよ』
ﾃｨｰﾁ「嫌だね。俺特製のチェリーパイが他の奴に再現されたくはないからな」
『そっか、残念』
ﾃｨｰﾁ「特別残念そうには見えねぇなァ？」
『…あは、バレた？』
『別に美味しいチェリーパイが食べられるなら何でも良いよ』
ﾃｨｰﾁ「ゼハハハハ、違いねェな」
どうやら生地は寝かせるらしい。
冷蔵庫に入れて、ティーチもカウンター側に回ってきた。
ｻｯﾁ「朝早くからすまねぇな」
ﾃｨｰﾁ「いいや、俺も料理は好きだからな」
料理好きという事実を少し意外に思いながらもコーヒーを淹れる。
ｻｯﾁ「なぁAちゃん？」
『…ん、どした』
何だもしかして惚気かと警戒しながらもぼんやりした頭で返した。
ｻｯﾁ「Aって料理するの？」
『…しない訳じゃないけど、それが何か』
ｻｯﾁ「なんか、調理器具の扱い手馴れてねぇ？」
ﾃｨｰﾁ「言われてみればなァ」
『まぁ、人に振る舞う仕事もしてたし』
『…とはいえ、兄弟とかに作ることの方が多かったし家庭料理以外はちょっとなぁ』
作れない訳ではないが苦手の内に入ると思っている。
ｻｯﾁ「へぇ。兄弟って何人居るの？」
『…上に一人。下は三人で、弟二人と妹一人だよ』
ﾃｨｰﾁ「兄弟多いんだな」
『そうだね』
『毎日騒がしかったよ』
ｻｯﾁ「…そりゃこんなにしっかりした子になるよな」
ﾃｨｰﾁ「確かにな」
ガチャ…
ﾗｲ「おはようございまぁす…」
ｻｯﾁ「おはようさん。今日は寝坊助だったな」
『おはようライ』
ﾗｲ「…Aー、ねむーい」
ぎゅー
背中に凭れかかるのはやめてくれ。重い。
『あぁ、眠いな。頑張れ』
ﾗｲ「ちょっと僕の扱いが雑になったんじゃない？」
『…どうかな。まぁ、うん。仕事しな』
ﾗｲ「はーい」
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作者名：雨狼 | 作成日時：2024年2月21日 12時
