家族のことが、大切だから (ページ7)

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１５３話ページ7

ポロロン……

ミミレドドラソ

ソソラドドレミ

ラソレレミミドドラソソドド

あれ、この曲懐かしいな。

何だったか。

楽団に混ざって仕事をしていたこともあるから、その時に聴いたのか。

それとも姉さんが弾いていたのか。

わからないが、耳に残る曲だ。

ポロロン…

ポロン…

ふと、自分の奏でる音の中に微かだが別の音が混ざったことに気付く。

『…オヤジ？』

振り替えればやはりそこにいた。

ｵﾔｼﾞ「グララァ、気配を消していたのに流石だな」

ｵﾔｼﾞ「Aも楽器が出来たんだなァ」

『…聴いてたんだね』

ｵﾔｼﾞ「あぁ、上手いモンじゃねぇか」

『私はまだまだだよ』

ｵﾔｼﾞ「誰かに教わったのか」

『昔ね。小さい頃…それこそ７、８歳頃だと思うんだけど』

『いろんなところで商売してる人でさ、色んなことを教わったの』

『路上芸とか、時計の修理とかして稼げるようになったのもその人のお陰なんだよ』

ｵﾔｼﾞ「ソイツはお前のことを気に掛けてたんだな」

『…そうだね。まぁ、ちょっとアレだけど良い人だった』

ズボラで放浪人で、出来ないことは極端に出来ない。

そんな人間だった。

ｵﾔｼﾞ「…A、お前はこの船が好きか」

『勿論』

『…どうして、そんなこと聞くの』

ｵﾔｼﾞ「今回の件もそうだが、お前がこの船に居たくないと感じていたらと思ってな」

今回船を離れたときに、どのぐらいこの船が好きかはっきりした。

『…施設に居た時は、死ぬために生きてるみたいなものだったし毎日地獄だったけど』

『ここに来てからは楽しいよ』

『こんなに自由で、愛して貰えて、凄く居心地が良い場所は他にないって思ってる』

ｵﾔｼﾞ「グラララァ、それは良かった」

『…でもね。だからこそ、不安になるんだ』

何故、オヤジにはいつもこうして本音を吐いてしまうのだろう。

ｵﾔｼﾞ「不安？」

『…そう。私って、やっぱりここにいるには異分子だし』

『…この家族の形をいつか私が壊しちゃうんじゃないかって』

『…オヤジ、〔あやかし〕っていう言葉の意味を知ってる？』

ｵﾔｼﾞ「…妖怪の類いのことを言う言葉だな」

『そう。それと、怪しくて不可思議なことを指す言葉なんだけど』

『これは元々、船が難破する時に出る妖怪のことを言っていたの』

あやかしなんていうタイトルの本の内容を思い出す。

ｵﾔｼﾞ「不吉だなァ」

そういって嫌そうな顔をしている。