１５２話 ページ6
女性として在りたいか。
否。
男性として在りたいか。
それもまた否。
まぁ詰まるところ性別なんて自身にとってはどうでも良いことで。
どちらでも良かった。
だが、立ち回り的にどちらともつかないぐらいに見えるのが一番やりやすいのだ。
一人称も私から僕、俺など色々使い分けるし、容姿も日によって全然違う。
私って、一体何なんだろう。
ふと、そんな考えに至った。
何時だったか、前にも同じことを考えた。
その時も同じ理由でだったのか、それすら思い出せない辺り、別にどうでも良かったんだろう。
そもそもの話、私自身純粋な人間ではない。
所謂亜人とか、その辺りに分類されるかも怪しいほど人間成分は少ない。
『……ふぅ』
いけない。
最近こんな風に無駄な思考に沈みがちと言える。
少し逆上せてしまったかな。
脱衣場を出て、甲板へ向かうことに。
＿＿＿
先程の賑わいとは打って代わり、甲板は伽藍堂そのものだった。
一人で貸し切りか。
悪くない。
楽器の手入れでもしようか。
そう思い部屋からハープと、道具を持ち出した。
このハープは、少し前に時計のお直しの依頼を受けて行った島で貰ったものだ。
このハープはベイビーハープと呼ばれ、膝に乗るようなサイズ感で、音が響くのは数m程度である。
ホビーの船首に座れば聴かれることもないだろう。
キュッ
キュッ
シャンッ
まずは弦を外していく。
それから布でボディを拭いて汚れをとっていく。
それも終わったらいよいよ新しい弦を張っていく。
くるくると弦を通したチューニングピンを巻いていく。
このハープは22本の弦をもつ。
ハープの弦の本数はピンきりではあるが、ベイビーハープの中では多い。
少々大変な作業ではあったが、何とか張り終えた。
そしてある程度チューニングしていく。
絶対音感があるわけではないが、相対音感はあるため適当な音に合わせて音階は作ることが出来るのだ。
ポロン…
ポロロン……
うん。
音は悪くない。
何を弾くでもなく、適当に音を出す。
弾き方は知っている。
だが何を弾くのも違う気がして、それとなく奏でてみる。
ポロロンッ
こう言った楽器の類いや、手品、造形についても教えてくれたんだったか。
あの人は元気にしているだろうか。
会いたいなぁ。
…こんな風に会いたいなどと思ったのは姉を除いて初めてかもしれない。
とはいえ、あの人は何処にいるかもわからないし。
世界中どこでも商売してるからな。
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作者名：雨狼 | 作成日時：2024年2月21日 12時
