１７７話 ページ32
部屋に戻り、コートを羽織る。
…必ず、エースだけは無事にここへ返してみせる。
【あやかし】をウエストポーチに突っ込み、その覚悟と共にボードとセイルを握り締めた。
＿＿＿
急いで甲板へ出ると、エースがストライカーに乗り込むのが見えた。
その背中を追ってモビーから飛び降りる。
ダッ！
『…エース！』
ｴｰｽ「っA！？」
ボードを下ろし、急いでセイルを立てていく。
ｴｰｽ「お前も来るのか…？」
信じられないものを見るような目で私を見ている。
『…うん、そうだよ』
ｴｰｽ「…何で」
エースを死なせないため、とは言う訳にもいかず、適当な理由を見繕うことに。
『…何か、ティーチにムカついたから』
ｴｰｽ「………お前もムカつくことあるんだな」
『そりゃね。…よし、準備できた』
バサッ！
セイルを開いてエースと並走する。
『…で、エース。いきなり飛び出したわけだけど』
ｴｰｽ「…おう」
『…どうやって追うつもりなの』
ｴｰｽ「……連れ戻さねぇのか」
『…まぁ。言って聞くならこんな事にはならないからね』
ｴｰｽ「…普通、力強くでも連れ戻すだろ」
一対一の勝負ならエースにも勝てる自信はある。
だがそれをしないのは、ただのエゴか。
……本当に、ちょっと怒ってたりして。
まぁ、自分の気持ちなんてそうすぐに分かるものではない。
『…言ったでしょ。私もエースと同じで怒ってるの』
私一人の力で、未来が変わるかなんて分からない。
それでも、何もしないなんて事は絶対にしたくない。
ｴｰｽ「……取り敢えず、まだそこまで遠くには行ってねぇと思うから」
ｴｰｽ「この近辺の島で聞き込みをしようと思う」
それでエースの手にはエターナルポースが握られていたのか。
『…そう。じゃあ第一の目的地は？』
ｴｰｽ「ワンコ島だな」
ワンコ島というと、犬が兎に角沢山いるという犬好きのためにあるような島だ。
観光名所でもあるため、何かしらの情報が集まるはず。
『…このスピードだと丸１日ってところかな』
『食糧は大丈夫？』
ｴｰｽ「おう。何か色々持ってるぜ」
そう言って小さなリュックの中身を見せてきた。
これだけ携帯食糧があれば２日は何とか凌げそうだ。
ｴｰｽ「……どれぐらい掛かるか分からねぇが、よろしくな」
『…勿論。最後まで一緒に行くよ』
ザバァ…！
波が出てきた。
余りにも酷くなったらストライカーに繋げるしかないか。
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作者名：雨狼 | 作成日時：2024年2月21日 12時
