１７０話 ページ24
『…でも、毎回マルコから貰うのも……』
ﾏﾙｺ「お前が誰彼構わず船の奴らを襲うよりは良いよい」
それは確かに最もな話だ。
『…なら、ちょっとだけ』
マルコには悪いが、背に腹は代えられない。
ベッドの端に腰掛けてもらい、マルコの手を取る。
ﾏﾙｺ「…首じゃなくても吸えるのかよい」
『…ん、太めの血管が通ってるところなら基本的にどこでも』
それだけ言ってマルコの手首に口を付ける。
この空腹感を耐えることは至難の技なのだ。
つぷ…
人よりもやや鋭利な犬歯を突き立て、小さな傷を作る。
ちゅ…
『…ん……ぁ…』
マルコの顔を見ると眉間に皺が寄っていた。
気を遣ったつもりだったが、痛かっただろうか。
『…ごめん、痛かった？』
ﾏﾙｺ「…いや、そうじゃねぇが……さっさと済ませろよい」
『…ん…』
再び傷に口を付けて、血液を吸う。
ちゅ…
じゅる……
ちゅっ…
ぺろり…
名残惜しいが、最後に一度舐めて口を離す。
傷は跡形もなく消えていた。
ﾏﾙｺ「…ふぅ、気が済んだかよい」
『…ん、助かった。貧血にはなってない？』
ﾏﾙｺ「あぁ、大丈夫だよい」
マルコの血…というより力は美味しい。
個人的には強さと比例して力も上質なものになっているように感じる。
ぺらっ
口の周りの血を拭いている間に服を捲られる。
傷の状態を診られているのだろう。
ﾏﾙｺ「…腹の傷も半分ぐらいは塞がってるっぽいねぃ」
ﾏﾙｺ「…とはいえ絶対に安静にしてろぃ」
『うん。ありがと』
ﾏﾙｺ「よい」
シャ……
再びカーテンに囲まれて一人になった。
満腹状態で布団に入っていると、眠気に襲われた。
お腹が一杯のときに寝られるというのは、思っていたより心地が良いものだった。
＿＿＿
次に目を覚ました時には、医務室には誰も居ないらしかった。
静かだ。
カチッ
カチッ
カチッ……
時計の音が耳についた。
…ふむ。
今は深夜だろうか。
足音一つしない。
目が冴えてしまった。
……が、することは読書ぐらいしかない。
部屋に戻って手慰みになるものを取ってこようか。
ギシッ…
シャ……
ガチャ…
カツ
カツ
カツ
カツ
カツン…
ギィ…
部屋に戻り、一つの箱を手に取った。
ギシッ…
私は普通の人間より耳が良いためか、床が軋む音が気になる。
…まぁ、大分慣れてきたのだが。
ガチャ…
医務室に戻り、サイドテーブルの上で箱から道具を取り出した。
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作者名：雨狼 | 作成日時：2024年2月21日 12時
