１４９話 ページ3
子狐は霧の中へと姿を消した。
人型へと戻り、小屋へ足を進める。
キィィ…
相変わらず建て付けの悪い小屋の扉の音でマルコが起きないか心配になってしまう。
幸い起きることはなく、ベッドの上に戻ることができた。
＿＿＿
昼前になって、もと来た海岸へ向けて出発した。
距離としては２００mほどだが足場も視界も悪いため、物凄く時間がかかる。
だからこそこの島を選んだのだが船に帰ることになり、そんなもの無意味となってしまった。
ﾏﾙｺ「本当に何も見えないねぃ」
『ここの霧は密度が高いからね』
さっき子狐の怪我を治したとき、加減を間違えて自分の怪我も治してしまった。
そのお陰で今歩かせてもらえるのだが。
ﾏﾙｺ「…ふぅ。やっと着いたねぃ」
砂浜へと出ることができた。
あとは船を待つだけ。
……船か。
本当に帰ってもいいのだろうか。
やはり不特定多数のクルー達が私のことを良くは思わないのでは。
『…ねぇ、マルコ』
『私やっぱり、』
ﾏﾙｺ「帰らないとは言わせねぇよい」
マルコは私の言葉を遮るようにそう言い放った。
しかし、私が帰ることであの船の中でいざこざが起こるなんてことは避けたい。
『…帰ってもいいのかな』
ﾏﾙｺ「…心配性だねぃ。大丈夫だよい」
ﾏﾙｺ「……まぁ帰ったらこっぴどく叱られるだろうがねぃ」
叱られる。
何に対してだろうか。
態々手間を掛けさせたことか。
ﾏﾙｺ「わかってなさそうだねぃ」
ﾏﾙｺ「本当は俺だって叱りたい所だが今回は許してやるよい」
いや、本当に何のことだ。
帰らないってそんなに重罪なのか。
小一時間浜に座っていると、霧の向こうに大きな影が見えた。
その影はどんどん大きくなっていく。
ﾏﾙｺ「船が来たみたいだねぃ」
マルコは海へと足を進めるが、私はどうにも踏み出せないでいた。
ﾏﾙｺ「ほらさっさと帰るよい」
そう言ってマルコは私の手を取った。
引っ張られる形で歩みを進め、そのままの流れで甲板まで飛ぶことに。
バサッ
バサッ
バサッ
トッ……
甲板へと降り立つとクルーたち皆に囲まれる。
罵声を浴びせられるだろうか。
それでも別に構わないが、この人数から暴力を振るわれるのは避けたい。
「心配したんだぜ！？」
「怪我してないか！？」
「この馬鹿！勝手に居なくなったら心配するだろ！」
「無事で良かった」
実際に聞こえたのは決して罵声などではなかった。
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作者名：雨狼 | 作成日時：2024年2月21日 12時
