１６１話 ページ15
薬品の匂い。
薄暗い。
私は何をしていたのか。
ここはどこか。
…ティーチに殺されかけたんだったか。
…となるとここは医務室。
起き上がると目眩がした。
…貧血か。
ベッドを降りてみる。
ト…
歩ける。
身体の感じからして大して長くは寝ていないだろう。
『…サッチ』
カーテンで隔てられた隣のベッドにはサッチが寝ていた。
良かった。
取り敢えず生きている。
…水でも飲みに行こう。
＿＿＿
ガチャ…
食堂に入ると、何人かの隊長が揃っていた。
ﾏﾙｺ「Aっ！」
ｴｰｽ「目が覚めたのか！？」
ｲｿﾞｳ「歩いて来たのか？」
『うん』
ﾏﾙｺ「そもそも起き上がれたのかよい！？」
『…うん』
ﾏﾙｺ「…普通動けるもんじゃないけどねぃ」
ｲｿﾞｳ「お嬢、ここに来るまでに傷は開かなかったのか？」
『うん、平気』
ｴｰｽ「つーか、こんなところに態々何しに来たんだよ」
『水飲みに来たの』
ｴｰｽ「取り敢えず座ってろ」
食堂の時計は10時28分を指していた。
廊下の薄暗さからして、午後１０時なのだろう。
ﾏﾙｺ「念のため喉を潤わすぐらいにしとけよい」
ｴｰｽ「こんぐらいか？」
少量の水が入ったコップを手渡してきた。
『うん。ありがとう』
『…サッチは寝てたみたいだけど、状態は？』
ﾏﾙｺ「…まだ目は醒ましてないが、急所は外れてたからすぐ回復すると思うよい」
『そうなんだ。良かった』
ｲｿﾞｳ「お嬢、何だか眠そうだな」
『…ん、まだ本調子じゃないしね』
ｴｰｽ「傷が開かねぇ内にまた寝ろよ」
先程から思っていたが、エースの態度がいつもより悪い。
『…ねぇ、エース？何に怒ってるの？』
ｴｰｽ「ティーチの野郎に決まってんだろ！お前やサッチに怪我させやがって」
ｴｰｽ「アイツは鉄の掟を破るつもりだったんだ。…それも、俺の部隊の奴だったのに」
『…そう。……でも追わない方が良いと思う』
ま、私の一存で決まるわけでもないか。
言ってもエースは行くって聞かないんだろう。
『…おやすみなさい』
ｲｿﾞｳ「…あぁ」
ﾏﾙｺ「俺は仕事ついでに着いていくよい」
＿＿＿
ﾏﾙｺ「…本当に歩いて平気なのかよい……？」
『うん。傷は開かないようにしてるから』
ﾏﾙｺ「…この怪我治したらまた飢餓状態になるかよい？」
『……このぐらいなら大丈夫かな』
ﾏﾙｺ「そうかよい」
ﾏﾙｺ「まぁ、無理だけはすんなよい」
ﾏﾙｺ「おやすみ」
そう言って布団をかけてきた。
『ん』
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作者名：雨狼 | 作成日時：2024年2月21日 12時
