５８話 ページ10
私が居ないと思ったのか。
『ここに居るよ』
ﾏﾙｺ「…A？お前は気配を消すのが上手いんだねぃ」
花冠を手に取って少し意外そうな顔をした。
ﾏﾙｺ「……花冠？」
何故だとでも言うような顔をしてこちらを見ている。
『……マルコが、仕事頑張ってるから』
『…頑張り過ぎないで欲しかったのと、適度に休んでほしかったから』
何となくその様なことは思ったが、それが理由で花冠だなんて我ながら可笑しな話だ。
ﾏﾙｺ「はは、そりゃどうも」
いつもの口癖が抜け、何とも言えない顔をされた。
困らせただろうか。
それとも失礼だっただろうか。
どちらにせよすぐに謝らなければ。
口を開き掛けた所で被せるようにマルコも言葉を放った。
ﾏﾙｺ「サンキューだよい」
そう言いながらこちらに手を伸ばしてきた。
叩かれるっ。
そう思ったが、それは違ったらしい。
マルコは、頭を撫でてきた。
何だろう、落ち着く。
されるがままにしていると、地面に置いていた帽子を被らされた。
ﾏﾙｺ「そろそろ刀も仕上がるだろうよい」
『うん。行こうか』
二人で西のあの店に向かう。
目の前の空はすっかり茜色に染まっている。
なら、明日も晴れるだろうか。
そうだったらいいな。
＿＿＿
裏の勝手口から入っておいでと言われているので一声掛けてから入らせて貰う。
コンコンコンッ
『レオナさん！来ました〜！』
ガチャ……
ﾚｵﾅ「おー、お帰り〜。もーちょい掛かるからその辺適当に座ってて」
ﾚｵﾅ「あ、飲み物は冷蔵庫から取って」
胡座をかいて座り、慎重に青貝を貼り付けている。
螺鈿は私は得意ではない。
どちらかと言うと漆で描いた絵に金属粉を蒔く蒔絵という技法の方が得意である。
『……レオナさん器用だね』
ﾚｵﾅ「んー？そうかい？」
『私は螺鈿細工は得意じゃないんだよね』
ﾚｵﾅ「へぇ。なら逆に何か得意な技法はあるのか？」
『…切り絵とかつまみ細工とかかな』
『紙と布を使う技法は得意かも』
ﾚｵﾅ「へぇー！でも、螺鈿とあんまり変わらなくないか？」
『貝が途中で割れちゃう』
ﾚｵﾅ「ほほぅ。それはまだまだ落ち着きが足りませんなぁ」
ﾚｵﾅ「貝を持ったら緊張しちゃうんじゃないの？」
『え、凄い。良くわかるね？』
ﾚｵﾅ「私も最初はそんなもんだったさ。多分基礎は出来てるから後は慣れだけだね」
『へぇ〜』
良く見ていると、螺鈿で桜の枝を表現している。
ひび割れた部分を上手く生かしているようだ。
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作者名：雨狼 | 作成日時：2024年1月8日 4時
