５７話 ページ9
『はは、そりゃどうも』
＿＿＿
Aside
私は綺麗な花畑に座っている。
マルコはというと海をじっと見つめて何かを考えている。
不意にマルコが空を見上げて寝そべり始めた。
驚いたのも束の間、長めの瞬きしたのかと思ったがすぅすぅと穏やかに寝息を立てている。
珍しい。
そもそもこの人はいつも睡眠不足だ。
こんな時ぐらいはゆっくり寝かせてあげたい。
花を見ていると、姉ちゃんに花冠の作り方を教えて貰ったことを思い出した。
折角だからマルコのを作ってみようか。
姉ちゃんが私のために作ってくれた花冠は綺麗で大好きだったなぁ。
なのに、大好きだったという記憶しかなくて、感覚を思い出すことさえ出来なくて。
胸がギュッ……となった。
この感覚は何なんだ。
姉ちゃんの手の動きを思い出しながら丁寧に作っていくと、なかなかの力作と言える仕上がりになった。
それにしても…本当に良く寝ているな。
朧な記憶の中から姉ちゃんやアイツらにして貰ったことを思い出して、そっとマルコの頭を撫でた。
これも、確かに好きだった筈なのに。
わからない。
解らない。
判らない。
今私は結局どうしたいのか。
まだ死にたいのか、それとも生きたいのか。
何が好きで何が嫌いか。
何が正しいのか。
わからない。
私が白ひげのクルー達に抱くこの感情も、わからない。
これじゃあ今まで言われたあの言葉達がしっくり来るではないか。
"来るな！化け物めっ！！"
"お前は私のお人形だ"
"お前は空っぽだ。全部人の真似事"
"そんなお前はただの兵器だ"
そうだ。
いつから私は、空っぽになったのだろう。
最初は、ちゃんとニンゲンだった筈なのに。
もしかして、そう思った時でさえ端から見れば異端児だったのだろうか。
…それもそうか。
私はヒトと同じではない。
私なんかが人間の中で、人間になど成れるわけがなかったのだ。
…いっそ…みんな、殺してしまおうか。
そうすれば、言葉で傷つけられることも……。
…いや、多分そんなことをしても満たされないのだろう。
……虚しいとは、空っぽで中身がない。動きがない。という意味だそうだ。
…私にぴったりな言葉だな。
なんて思っていると、島にモビーがやってきた。
暫くするとマルコに動きがあって。
握り潰してやろうとしていた花冠を持ち直して気配を消した。
マルコにはバレるかな。
マルコは辺りを見回している。
ﾏﾙｺ「……A！？」
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作者名：雨狼 | 作成日時：2024年1月8日 4時
