５５話 ページ7
そう言って両手を上げて見せた。
「ちょいと失礼するね」
髪の中やタートルネックの裏からサンダルの裏まであらゆる部分のチェックを済まされた。
次にマルコにも手を延ばそうとした。
骨格からしてコイツ……さては男だな。
パシッ
『……コイツは縁無しだ』
縁無しとは、裏の仕事に手を染めてない人間のことを言う隠し言葉だ。
「…いやでも」
その言葉で引き下がらないところを見ると、余程用心深いかマルコに触りたいかの二択だろう。
手首が音を鳴らすぐらいキツく握ってやった。
『アンタ、好色家だな』
「あれ、バレちゃった？」
『はは、この業界も長いんでね』
「にしても、お兄さんいい身体してるね？逆にこのレディが縁無しだって言われた方がしっくり来る」
『そう言う目で見ないで貰えるかな。コイツは俺のお気に入りなんだ』
マルコに手を付けられでもすれば、なんて思うと気持ち悪い。
「そりゃ失礼しやした。お兄さん愛されてんね」
ﾏﾙｺ「……はっ？」
『…ほっとけ』
「で、商売に戻りやしょうね」
「紫外線カットのコンタクトの種類はこんなもんですぜ」
そう言って持ってきたのはブラック、ブラウン、ブルー、グリーン、グレー、イエロー、レッドで各々瞳を大きく見せるもの小さく見せるものもある。
『…ブラックとブラウンのノーマルは２つずつ。後は全部１つずつ』
「毎度ありぃ。いつもこうならいいなぁ」
後は……。
『ヘアカラースプレーも全部まとめ買いする』
「ほう。そりゃお客さんも商売繁盛してるんですねぇ」
一端の同業者の類いにしては買う量が違うからすぐにバレるのだろう。
『はは、そりゃどうも』
『んで、靴のオーダーを頼みたい』
「へぇ。どの様なご要望で？」
『……あー、』
マルコには余り聴かれたくない内容だ。
『ちょっと』
手招きしてマルコをこちらに寄せて、私の方を向かせて座らせる。
ﾏﾙｺ「どうしたんだよい？」
素性は出来るだけ晒したくないからマルコの名前を呼ばないようにしておく。
いや、新聞を見てるならマルコぐらいすぐ判るだろうが。
マルコの耳を塞いで、帽子を被せておく。
『んで黒いワークブーツが欲しいんだが、左右に各々2kgの鉄板を付けて作って欲しいんだ』
『あと、踵から短剣が出るようにもしてほしい』
「お客さん我が儘ですねぇ」
『出来ねぇ？』
「うちの腕舐めないで貰っても？」
『はは、そりゃ頼もしい』
「少々高さが出るが、それでも良いんで？」
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作者名：雨狼 | 作成日時：2024年1月8日 4時
