５４話 ページ6
何だか船乗りの端くれとして不吉なものを感じたが、それ以上に無視できないものであった。
開いてみると小説だった。
軽く読んだ内容としてはあやかしの双子が産まれ、その片割れが乗った船には幸運が訪れる。
そして、もう片方が乗った船は次々と沈んでいく。
何とも不吉な。
ふむ。
にしても…
ﾏﾙｺ「A？何読んでるんだよい」
何となく内容は見せてはいけないものな気がして。
パタンッ
ﾏﾙｺ「……小説？」
『そう』
「その本面白かったかァ？売れ残ってるヤツだから持ってっていいぞ」
『え、いいの？』
「あァ、そろそろ棚の整理もしたかったしなァ」
そして適当な本を3冊くれた。
いや、押し付けられた。
『…ありがとうございます』
「いいってことよォ」
マルコも一冊医学書を買っていた。
「まいどありィ」
＿＿＿
ﾏﾙｺ「次はどうするよい？」
ナースさんとよく回っているのだろうか。
女性と歩くことも手慣れているな。
まぁ、愛人の１人やふたり居たところで別に何もありはしないわけだが。
そうだな。
カラーコンタクトやカラースプレーは揃えておきたい。
そもそも拠点に帰れたらこんなものは買わなくていい。
…今更気軽に帰れるわけではないから仕方ないか。
『……これまた面白くないだろうけど』
などと言いつつ、マークしておいた衣類に限らずメイク用品、靴、ウィッグ、コンタクトまで揃えている店へと向かう。
初めからここ１つでよかったのでは……？
その店は多分同業者なんかを相手とした商売をしているのだろう。
路地裏の奥にひっそりと佇んでいた。
ﾏﾙｺ「こんな路地裏に店なんかやってるとはねぃ。ロクな商売してないだろぃ」
『まぁ、そうだろうね』
ドアを開けるとまず聞こえたのは
「いらっしゃいませぇっ！！」
という声だ。
この女主人の地声は知らないが、多分裏返っただろう。
「あ、え、お、お客様ですか！？」
ﾏﾙｺ「それ以外何があるよい」
「何分お客が来ることも滅多にないお店なもので……」
もしも普通の客だったら困るからだろう。
こちらを見定めようとするような視線。
不愉快極まりない。
『…あー、建前はいい。紫外線カットの付いたカラーコンタクトを出してほしい』
いきなりドスを掛け過ぎたか。
マルコもいきなりのドス声に驚いているらしい。
「……あー、なるほど。オーケー」
「……の前に、武器チェックをいいかい？」
『…あぁ、好きなだけチェックすればいい』
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作者名：雨狼 | 作成日時：2024年1月8日 4時
