９８話 ページ50
『……何年か殺人で成果を上げてると、番号名がつけられる』
『番号は１から１０まであって、数字が小さくなればなるほど組織の中の位が上がる』
『……それと同時に、責任が伴うようになるんだ』
この先を言葉にするのは私には荷が重く、また言い淀んでしまう。
『……施設の中には、子どもばかり集められてたんだ』
『みんな、兄妹みたいなものなんだけど』
……私には、これを受け止める勇気がまだ、無い。
私のせいで。
『……位が、上がれば上がるほどペナルティが重くなる』
『…それで、誰も逆らえないし、誰も抜け出せない』
『……施設でも、十分な生活は出来ないから番号持ち達がお仕事の報酬とは別の手段でお金を入手して』
『それを使って下の階級の子の世話をしてるの』
『……私は、いつか施設の、組織の解体を目論んでる』
『その後のみんなの安定した生活のためには莫大な資金がいる』
『……だから、まだ仕事を辞めることは出来ない』
『……っていう、話だったんだけど』
取り留めもなく、だらだら長々と話してしまった。
『…何が言いたいかわからなくなっちゃった』
みんな絶句、という言葉が一番似合いそうだ。
唖然として、私の言葉を各々咀嚼している。
ｴｰｽ「…A、こっち来い」
腕を広げてそう言う。
『いや、大丈夫だよ』
ｴｰｽ「大丈夫じゃねぇ。泣きそうな顔してる」
『…嘘』
表情なんか素で動くことはないはずなのに。
そう躾られているのに。
ｴｰｽ「嘘じゃねぇ。いい加減自分の気持ち無視すんな」
『……言われてもわからないんだよね』
ｴｰｽ「ここで分かるようになりゃいいだろ」
こういう時だけ兄貴面しやがって。
なんて悪態をつきつつ、素直に腕に収まってみる。
エースは強く抱き締めてくる。
ﾏﾙｺ「……それでワーカーホリックだったんだねぃ」
『そうだよ』
って、言った声が自分の思っていた声ではなくて。
震えた声が出てしまった。
本当に、泣きそうなのか。
自分でも訳が分からず視界がぼやけていく。
何故。
ぽろっ……
何かが落ちた。
ぽろぽろ……
止まらない。
何かが落ちた手のひらを見ると、水滴が２つ転がっていて。
目から零れ落ちるそれが涙だと気がつくには随分時間がかかった。
『……ぇ…何…っあれ……』
拭っても拭ってもとめどなく零れ落ちてくる涙に困惑する。
ｴｰｽ「…今までずっっと、Aは自分の気持ちに蓋をしてた」
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作者名：雨狼 | 作成日時：2024年1月8日 4時
