５３話 ページ5
新たな気付きを得たところで、マルコも見たいものは無いだろうかと思考を巡らせる。
あ、本とかはどうだろう。
いつも読んでたし。
『……マルコ、本屋とか興味ある？』
ﾏﾙｺ「あ？あー、俺のことは別にいいよい」
『時間いっぱいあるし、せめてこのぐらいは』
ﾏﾙｺ「んー、ならお言葉に甘えて」
やはり本屋をマークしていたらしい。
すぐに進む方向を切り替えて進み出した。
改めて見るとマルコも整った顔をしているのだな。
やはり自分は醜美には疎い気はするが、多分あの船は整った顔立ちの人間が揃っていると見える。
＿＿＿
本屋に着くと、マルコは早速医学書を手に取っていた。
彼もまた仕事に重きを置いている人間だと思う。
話しぶりからして古株なのだろう。
そのせいもあって長男気質でいつも周りを見ているような人間だ。
マルコこそ息抜きが必要なのだろうが。
そんなことを思いながら店主の男と小声で話をする。
『店主さん、この島について教えてよ』
「そーだなァ、ここは中央区と北側は特に栄えてて南は居住区、あと東西はお嬢ちゃんが１人で歩くにはちぃっと危ないなァ」
ここまでは調査済みだ。
「あと、東には丘があってな。そこの花畑が綺麗なんだぜ」
『へぇー、そうだったのね後で行ってみようかな』
「後は……そうだなァ。中央区は装飾品なんかが有名で店も多いぜ」
『あー、街中の物も装飾が凝ってたもんね』
『この島には楽器屋とかないの？』
「楽器ねェ……東の外れのルマニっつー町には１つあったぜ」
「楽器やってるのか？」
『そういうわけじゃないんだけど、楽器を見るのが好きでね』
「ほー、物好きだねェ。そうだ。楽器の本はこっちの棚だぜ」
『ありがとう』
適当に一冊取ってみる。
ピアノの楽譜や演奏のコツについて事細かに記されている。
路上でピアノもやったし歌ったこともあるな。
今思えば私の稼ぎ方は多岐に渡っている。
命令されればそういう裏の仕事もやってきたし、路上芸もした。
ある時は全うな島民となったり、海兵だったこともあった。
手品もやったことがあるな。
ぼんやりとそんなことを思い浮かべつつ本を棚に戻す。
マルコを方を見やるとまだ熱心に医学書を読んでいた。
もう少し私も何か見てみよう。
棚を眺めていると、
【あやかし】
という本が目についた。
辞書には確か…船が難破するときに出る妖怪のことで、それが転じて怪しく不思議なことを言うと書いてあった。
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作者名：雨狼 | 作成日時：2024年1月8日 4時
