８５話 ページ37
そう言いながら私の上を退く。
『…はぁ……はぁ…』
珍しく息が切れる。
ﾚｲﾘｰ「にしても少しやり過ぎたか。すまない」
ﾚｲﾘｰ「これに懲りたら外で寝るのは止めておくことだ」
『…うん』
こんなことをしなくても、私は理由がなければ野宿はしない。
……はず。
うん。
お金が勿体無いとは思ったけど。
ﾚｲﾘｰ「良く足を払われても立っていたな」
『でも結果的には倒れたし、ちょっと不満かも』
ﾚｲﾘｰ「はっは。でも私に一発入れたじゃないか」
『……ん、一発…？』
一発も入らなかったはず。
ﾚｲﾘｰ「私が足を掴んだとき、私の身体を蹴っただろう？」
『…あれは、攻撃というか』
ﾚｲﾘｰ「私の拘束を解くためとは言え一発入ったのも事実だろう」
『……そういうものかな』
ﾚｲﾘｰ「嗚呼。良いのが入ったぞ」
などと爽やかに口にする。
…そんなにダメージは入らなかっただろう。
ﾚｲﾘｰ「もう良い時間だ。バーに戻るとしよう」
そう言って来す道を戻っていく。
＿＿＿
カランコロンッ
ｼｬｯｷｰ「あら、おかえりなさい」
ｼｬｯｷｰ「お疲れ様。レイさんに酷いことされなかった？」
『大丈夫でした』
あれは、酷いことに入らないことにしておく。
レイリーはシャッキーさんから酒を貰っている。
『……レイさん、お酒も程々にね』
『シャッキーさん、煮豆美味しかったです。ありがとうございました』
『近くを通ったらまた来ますね』
そう言ってカウンターにお金を置いていこうとした。
しかし、ぼったくり…とは、どのぐらいだろうか。
恐らく法外の値段だろうが。
煮豆とは本来どのぐらいの値段なのか。
……あ、そもそも細かいお金は持っていないんだった。
ふむ。
……長居してしまったし、そのお礼も含めた金額にすべきか。
そう思って一万ベリーをカウンターに置いていく。
ｼｬｯｷｰ「あら、Aちゃんからお金は取らないわ」
ﾚｲﾘｰ「もう行くのか。急いでないんじゃなかったか？」
『二週間で帰るって書き置きしてきちゃったから』
ﾚｲﾘｰ「書き置き？」
あ、しまった。
今までの言い訳が。
そもそも、何故言い訳してたのか。
素性を隠そうとするこれも癖なのだろう。
『……えっと、お世話になってる人がいてね』
『その人たちに何も言わずに出てきたから書き置きしておいたの』
嘘ではない。
ﾚｲﾘｰ「なるほど。なら尚更私はキミを新世界へ行かせたくはないな」
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作者名：雨狼 | 作成日時：2024年1月8日 4時
