８４話 ページ36
『うん。それは自分もよく実感してるよ』
あと一歩の所でパワー負けする。
いつもそうだった。
……本気では無かったとはいえ、あの冥王レイリーに勝てるとは。
不覚にも嬉しい、などという感情を抱きながらもレイリーを見やる。
ﾚｲﾘｰ「息も上がっていないみたいだな。じゃあ体術の方もいこうとするか」
今…？
確かに息は上がっていないが、正直疲労感は拭えない。
そもそも疲れたからこの島にいるのに。
『……ん、わかった』
……ふぅ。
初めは探りあいだった。
相手がどう動くのか。
それをお互いにジリジリ動きながら行う。
ダッ！！！
先に仕掛けたのはレイリーだった。
初動が一瞬遅れたものの、初手は回避できた。
私も仕掛けるしかなさそうだ。
ダッ！
間合いを一気に詰めて蹴りを繰り出す。
ガシッ！
が、それをレイリーに掴まれてしまう。
ドンっ！！
レイリーの身体を蹴って何とか拘束からは逃れたものの次の手には繋がらない。
サッ！！！
一瞬
音よりも速くレイリーとの間合いを詰める。
そのまま、鳩尾に狙いを定めて殴りかかる。
パシッ！！
しかしそれすら見据えていたようにその腕を掴まれた。
ギュ…
今度は抜けられないほどに強く握られてしまった。
兎に角足を払って体勢を崩させようと思ったが、逆にレイリーに払われた。
それだけなら私だって体勢を保てたはずだったのに。
トンッ！
『…っあ』
私の腕を掴んでいない方の手で肩を押されてしまった。
ドサッ……！
先程の状況と酷似しておりややデジャヴを感じたものの、流石にこれはまずいのでは。
私の両腕は頭の上で固定され、身を捩れないように腹の上には膝を当てられている。
更には私の拘束に使っていない右手で身体を柔く撫でられている。
『………レイリー…っ』
止めてくれ、そういう意図で名前を呼んだものの、何故だか寧ろ私を触る手の動きは動的になる。
この人は擽る天才なのだろうか。
などと考える程にはくすぐったくて、何とも形容しがたい感覚が押し寄せる。
『んひっ…！』
『…レ、レイさっちょっ…！離してっ、』
身を捩ることは許されず、擽ったい感覚を逃がせなくて苦しい。
『…ぅ』
『ちょっ…く、すぐったっい』
それでも全く離す様子はなく。
しかもニヤリと笑みをたたえている。
『……も、離して』
ﾚｲﾘｰ「…はっは、少々意地悪が過ぎたか」
ﾚｲﾘｰ「でもこれぐらいしないと外で寝る危険性は理解してもらえないだろう？」
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作者名：雨狼 | 作成日時：2024年1月8日 4時
