６７話 ページ19
私もそう言ってその手を握る。
思っていたより手が大きくて、握れてはいないが。
ジンベエさんの顔を見ると、何やら嬉しそうに綻んでいて。
『……どうかしましたか』
ｼﾞﾝﾍﾞｴ「いや、Aさんは躊躇いなくわしの手を握ってくれるんじゃな」
ナミュールともこんな会話をしたな。
魚人はそう言うことが嬉しいのだろうか。
『えぇ、握手をしない理由が私にはないので』
ｼﾞﾝﾍﾞｴ「Aさんは良い人じゃな。それと、わしにかしこまらんでええわい」
恐らく、敬語を外せということだろう。
『…うん。じゃあ、そうするね』
それからエースの戦いっぷりを話してもらって、その勇姿を称えるようにスペード海賊団のクルーたちも会話に混ざってきた。
ｼﾞﾝﾍﾞｴ「どんな攻撃を受けても何度も立ち上がるんじゃ。エースさんは、正に不屈不撓じゃな」
話しぶりからして、ジンベエはエースを気に入ったのだろう。
『……身体に障るから、そろそろ休んだ方が良いと思うよ』
そう切り出したことで、エースを語る会なるものはお開きとなった。
＿＿＿
夕食の時間に食堂へ行くと、やはり私の席とプレートが用意されていた。
プレートの中身は普段と趣向が違うようで。
『……薬膳』
ﾏﾙｺ「そうだよい。味はアレだが今のお前には効くだろうよい」
ｲｿﾞｳ「……うわお嬢、吐かないように頑張れ」
一体何が入っているのか。
『…いただきます』
…意外と、食べられる。
そもそも味は分からないが。
ドロッとした緑色の何か。
本当に、効果なんてあるのか。
＿＿＿
マルコside
A「…いただきます」
正直こんなもの食べられた物じゃないが、効果は確かなのだ。
……が、薬膳を口にしてからも顔色一つ変えることはない。
元々表情は分かりづらいし、ほぼ変化を見せないが、それにしても手を止めることすらなく食べ進めるAは異様だ。
ｲｿﾞｳ「お嬢それ、食えるのか？」
イゾウも信じられないものを見るような目をしている。
A「…？うん。食べられないものが入ってる訳じゃないでしょ」
確かにそうだが。
苦く、酸味辛味もある。
まるでレモンとパクチー、抹茶を混ぜたような味だ。
『…無理はするなよい』
そう言っても全く手を止めず、暫く咀嚼しながらも完食した。
A「ごちそうさまでした。じゃあね」
そう言って食堂を出ていく。
ｲｿﾞｳ「サッチ、これいつもの薬膳だよな」
ｻｯﾁ「そうだぜ」
『流石に、可笑しくねぇかよい』
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作者名：雨狼 | 作成日時：2024年1月8日 4時
