６６話 ページ18
あの時挨拶しておかなかったのが少し心残りだったか。
思い出すと懐かしさに包まれた。
昔のことを思い出しているうちに、島が見えてきた。
船は……
…あった。
島の西側に停泊していたモビーの傍らで私もセイルを畳み、ボードもモビーに上げておく。
ジンベエさんとエースは無事か。
ジンベエさんとこの船の人々は親しくしていると聞く。
恐らく深い交流があるのだろう。
＿＿＿
ｲｿﾞｳ「…お嬢？島から遅れて追い掛けて来たんだってな」
甲板で、イゾウに声をかけられた。
『うん。刀直して貰ってたの』
ｲｿﾞｳ「成る程、それで？帰ってきたら言うことがあるんじゃないか？」
言うこと、？
怒られるようなことをしただろうか。
無断で宿泊していたことだろうか。
暫く考え込んでいると、イゾウは可笑しそうに笑って
ｲｿﾞｳ「クク…何も難しいことじゃないんだがな」
などと言っている。
ｲｿﾞｳ「おかえり」
……成る程。
そう言うことだったのか。
『……ただいま』
よくできましたとでも言わんばかりに少し荒っぽく頭を撫でられた。
ｲｿﾞｳ「…そう言えば髪、染めたのか？」
『ん、すぐ落ちるやつだけどね』
エースは"アルカ"を覚えているだろうか。
『それより、ジンベエさんと火拳の一騎討ちってどうなった』
ｲｿﾞｳ「嗚呼、5日間戦った末に共倒れしてな。その時に俺らが島に着いたんだ」
ｲｿﾞｳ「そしたら火拳とその仲間がオヤジに向かって来たんだが」
ｲｿﾞｳ「まぁ、結果は惨敗。今は治療を受けてる」
『そっか』
良かった。
無事らしい。
それから毎日何度も何度もエースはオヤジに挑んでいる。
いつ姿を現そうか。
なんて思いながらその様子を眺める。
…今姿を見せたらこの船に乗るか反るか、判断に影響が出るかもしれない。
せっかく染めたけど、決断するまで待っていようか。
そう思い、まずはお風呂に入った。
しっかり洗えば一回で落ちるような染色だったため、私の髪はまた銀髪になった。
＿＿＿
医務室へ行くと、ジンベエさんとスペード海賊団のクルー達が手当てされていた。
ﾏﾙｺ「お、Aか。おかえりだよい」
『ん、ただいま』
「貴女がAさんか。話には聞いておったんじゃが、こうして顔をあわせるのは初めてじゃな」
こちらに気が付いたジンベエさんはそう言ってこちらに手を出してきた。
握手を求めているのだろう。
『ええ、はじめまして。新参者ですがよろしくお願いします』
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作者名：雨狼 | 作成日時：2024年1月8日 4時
