家族なんて、欲しくなかったのに (ページ14)

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６２話ページ14

好きなタイミングでの乗り降りを許可してもらうことだ。

これは、仕事を島に降りてするために提示したのである。

兎に角、稼がなければいけないのだ。

好きなタイミングでの乗り降りが可能なら、今から一人で街に出ても問題はないはずだ。

朝食までに戻れば良いだろう。

＿＿＿

午後9時30分。

今私はマルコからもらったサンダルを改造して身長を盛り、男性に扮している。

商売致しましょう。

ここに来るまでの道中の店で適当に買った紙にブルーベリーの果汁を染み込ませ、レモン果汁とミネラルウォーターそしてただの水をスポイドに入れておく。

あとは場所か。

ふむ。

中央区の噴水周辺が良いだろう。

子供向けの簡単な実験を行うため、この時間でも子供が彷徨けて通行人が多い場所が最適だ。

道具を広げていると段々人が集まってきた。

「お兄ちゃん何するの？」

小さい子供まで集まってきて、良い感触だ。

『今から簡単なマジックをするんだよ！見ていってくれる？』

「うん！」

『お嬢さん、好きなお花はある？』

「カーネーションが好きだよ！」

そう言われたので先ほどの紙でカーネーションを折っていく。

『さぁさぁ、お集まりの皆様！私の手元にご注目ください！』

『好きな色は？』

「えっとねー、オレンジが好き！」

『オーケー！』

『今、私が持っているのは紫色のカーネーションです！』

『でも、良く見ていてくださいね？』

スポイドから数滴のレモン果汁を垂らす。

すると、段々とカーネーションはオレンジ色へと変わっていった。

「わぁぁ！！綺麗！」

わっと歓声が上がる。

『紫色のカーネーションが、オレンジ色に変わりました！』

『お嬢さん、協力してくれてありがとう』

「うん！」

「ねーね、僕もお花欲しい！」

『良いよ！何のお花が好き？』

「チューリップ！」

『何色がいい？』

「青！」

『オーケー、いくよ？』

今度はミネラルウォーターを数滴垂らす。

じわじわと紙に浸透していくにつれて、どんどん色が変わっていく。

『はい、どうぞ』

何ていうちょっとした手品を見せて得た投げ銭だけでざっと２万ベリー。

材料費を差し引いても１万7000ベリーほどはプラスである。

流石は上流階級の人間が住む中央区。

羽振りが良い。

その時、人混みの中にイゾウの姿がチラリと見えた。

……誰にも言わずに出てきたから怒られるだろうか。

否、許可してもらっているためそんなことはないはずである。