５９話 ページ11
『……凄いね。綺麗』
ﾚｵﾅ「照れるわぁ」
弾痕の八方に伸びたひび割れの部分には大輪の桜が咲いている。
『その刀はね、蝶舞桜って言うの』
ﾚｵﾅ「へぇ、この子にぴったりな名前だね」
『そう。……ありがとう。大事な刀だったの』
『おかげで更に綺麗な刀になっちゃった』
ﾚｵﾅ「んふふ、どーいたしまして」
＿＿＿
ﾚｵﾅ「……はい！出来た！」
『ん、やった！ありがとう！』
ﾚｵﾅ「二人はもうちょっとこの島に居る？」
『うん。そのはずだよ』
ﾚｵﾅ「実はまだ漆が乾いてないんだけど、どうする？」
漆かぶれする人が居たらちょっとした接触でも良くないし、漆が割れた拍子に鞘にも傷が付くかもしれない。
『あー……持って帰ったら反って悪化するかもだよね』
ﾚｵﾅ「良かったら乾燥させる間うちで預かっとくよ」
『良いの？』
ﾚｵﾅ「もちろんさ」
ﾚｵﾅ「ちょっとお話しして行かない？ついでにこの刀のことも教えてよ」
マルコの方も別に異論はないようだ。
『うん。いいよ』
レオナさんはマルコに珈琲を出すことにしたらしい。
ﾚｵﾅ「Aちゃんは、海賊なの？」
この人は多分海賊だからと言って店から追い出すようなことはしない。
『そうだよ。って言っても、まだまだ弱いけどね』
ﾚｵﾅ「Aちゃんって人斬ったこととか、斬られた事ってどのぐらいある？」
人を"斬った"だけの数ならそこまで引かれるような数字ではない、だろう。多分。
『……んー、斬ったのは53人。斬られたのは…覚えてないや』
数えることを止めるほど、繰り返し繰り返し身体をバラバラに刻まれてきた。
ﾚｵﾅ「斬った人数はきちんと覚えてるんだ」
『うん。斬られたその人達がどうなったか何て知る術もないけど、紛れもなく私が斬ったんだからさ』
『斬ったっていう事実を憶えてないなんて無責任だなーと』
ﾚｵﾅ「なるほどな。まぁ、あんまり背負い過ぎちゃ駄目だよ」
『もちろん』
それで潰れるなんてもっての他だ。
ﾚｵﾅ「でも何で斬られた数は覚えてないんだ？」
『戦闘中に斬られた傷なんていつ付けられたかも判らないし、別に数えるような物じゃないかなと思って』
ﾚｵﾅ「ほぉん。そう言うもんかねぇ」
ﾚｵﾅ「そうだ。Aはマルコと同じ船に乗ってるの？」
『うん。そうだよー』
ﾚｵﾅ「いつから？」
『…えぇっと……確か、乗ったのは三週間ぐらい前かなぁ』
そこからクルーになるまでが長かったと、今更ながら考える。
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作者名：雨狼 | 作成日時：2024年1月8日 4時
