【HQ】烏野高校に通う、とある少女の話８

嫌い、好き【黒尾鉄朗】 ページ42

10月の代表決定戦を控えた三度目の遠征


黒尾さんと体育館に二人きりという何だかデジャヴを感じる状況の中、


「秋山ちゃん」


いつにもまして真剣な声で先輩に名前を呼ばれ、片付けの手を止めて私は後ろを振り返った




『どうしました？』

「あー、えっと」


珍しく歯切れの悪い黒尾さんに首をかしげる


「あー」だとか「うー」だとか言っていた先輩は、しばらくしてからようやく意を決したかのように口を開いた




「その……この前は悪かった」

『この前…？』


先輩の言葉を小さく反芻してから何の事か思い出そうと頭を回転させる

…

…

…

…あ、


―このまま、少しだけ―


…あれか




『…別に謝られる筋合いなんてこれぽっちもないですよ』


決まりの悪そうな黒尾さんにそう言って微笑んでみせた



『先輩はいつでも大人だから、たまには肩の力抜いたっていいと思います』

「…」


珍しく無言の黒尾さんにふふっと軽く笑ってから、私はなんとなしに再度口を開いた



『それに、私そんな先輩も好きですから』

「……ん、サンｋｙ…」


ようやく言葉を発したかと思ったら途中で突然固まったクロ先輩に何事かと首をかしげる



『何ですか？』

「…お前」

『は、はい』

「…さっき言ったこともう一回言ってみろ」

『さっき？えっと、先輩はたまには方の力抜いてもいいんですよ？』

「違ぇ、その後」

『え〜、もう何ですか…』

「いいから、ほら」


そう促され、渋々その後の言葉をもう一度口に出した



『だから、そんな先輩も好、き…』

「…なんて？」


自分が口にした言葉の重大さに今更になって気付きぴしりと体が固まった


そんな私をニヤニヤしながら見下ろすこの人はやっぱり相当人が悪いと思う

…まぁ、それは分かりきってたことだけど




『は、ははは〜何のことでしょう

…じゃ、じゃあ私はこれで！』


そそくさと逃げ出そうとするも、それより一瞬早く伸びてきた長い腕が私の手首をしっかりと掴んだ



「はい残念〜、もう一回

…俺の目見て言ってみ？」


私を自分の方に引き寄せながらゆっくりと顔を近付けてくる先輩に、自分の顔が段々と熱くなっていくのが分かる


…自分の顔の良さを自覚してこういう事をしてくるからムカつく

そしてその余計な色気をしまえ、色気を

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