【HQ】烏野高校に通う、とある少女の話８

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「…次会えるのは全国の舞台だ」

『はい』

「…寂しい？」


優しく頬を包まれて、自然と顔が先輩の方を向く



目をじっと見つめられて


(…逃げられない)



そんな私に許された答えは一つだけ





『……はい』

観念したように小さく呟いた



木葉さんがうっすらと微笑む




「…俺も」


ゆっくりと近付いてくる先輩の綺麗な顔に
私はそっと目を瞑った




温かくて柔らかいものが優しく唇に触れる


何だか泣きたくなるような、そんな幸せな気持ちに浸っていると




『ん！？』

突然唇を軽く食まれ、驚いて思わず身を引いた



『なっ…！』

「え、何？」

『今、た、食べ…』

「あーごめん、つい」


微塵も悪いと思っていなさそうな口ぶりに、隠すように思わず自分の口を片手で覆う




「まぁ舌入れなかったからセーフだよ」

『なっ…！』


飄々とした態度でそんなことを慣れたように口にするものだから、熱かった顔が更に熱くなった



…ちゃ、

チャラい…！！


雪絵さんとかおりさんが言ったとおりだ、なんて頭の片隅で思い出す




「ふはっ！そんな警戒しなくてもこれ以上のことはしねぇよ」


下りてきた長い指が私の髪を梳くように撫でた
　



「…もっと深いやつは次会ったときな」

『へ！？』

「心の準備しとけよ〜？」



先輩はそう言って私の頬を軽くつねりながら目を細めた



わたわたと慌てていると、再度優しく抱き寄せられる




「あーあ、帰したくねぇなー」

『…はい』

「他の男によそ見すんなよ」

『…先輩こそ』

「………やっぱ今深いのしちゃダメ？」

『なっ…！！む、むむむ無理です！心臓死んじゃう！！』

「はいはいw」




こうやってただ抱きしめられているだけで

こんなにも胸が痛いのに






…先輩、

私、ちゃんと覚えているから



あなたの匂い
　
広い背中

長い腕に包まれると、どれだけ幸せな気持ちになれるか




だから


次会った時も

こうやって抱きしめて欲しいです




遠距離恋愛の不安なんてかき消すくらい

”大丈夫だよ”って言葉にしてくれなくていいから



抱き締めて、頭を撫でてくれるだけで


それだけで




…幸せ、だから





浮かんでは消えていく、胸が締め付けられるようなこの想いが少しでも届くようにと

私は背中に回した腕に、ぎゅっと力を込めた



【選択肢 end】

星【菅原孝支】→←.

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