【HQ】烏野高校に通う、とある少女の話８

日向side ページ11

―いつからAは、こんな風に笑うようになったんだろう。

綺麗に笑う目の前の女の子を見て、ただただそう思った。




泣き虫で、強がりで、笑った顔が可愛くて。

絶対に守ってやらなきゃいけない女の子。




―俺が守ってやらなきゃ―


子どもながらにそう思ってから、今日までずっと抱いていたその決意は

今も、もちろんこの先も

例えこの先Aと離れることがあっても
俺の中では絶対に変わらない。


…変わらない、はずだった。





(…でも)


帰ってきたとき、指先を微かに震わせていたくせに



「…これは、私の傷なんです」



あまりにも何ともないような顔で笑ってみせるから、俺は思わず息をのんだ。





絡まれて、怖かったくせに。
Aのことだから絶対泣いたくせに。

俺らに心配をかけまいと気丈に振る舞うその姿に心臓をぎゅっと掴まれたような、そんな感じがした。


…なんだかたまらなくなって、思わず両手を握りしめる。





…と同時に


(…いつの間に、こんなに強くなったんだろう)


何だかほんの少し、寂しくなった。



もう守られるだけの女の子じゃないと
一人で大丈夫だと

…そう、言われた気がして。



　



………でも本当は俺、ちょっとだけ気付いてたよ。




―私、ちょっとバレー部から逃げるね！！―

―でも、絶対また戻ってくる！！―

―…傍にいるよ―




傍にいるはずが、傍にいてくれていて。
助けているようで、助けられていて。

…Aは、もう守られているだけの女の子じゃないってこと。






『…影山』

隣に座る影山を呼ぶ。



「…んだよ」


Aをじっと見つめたまま返事をする影山に
俺も同じように、前だけ見て呟いた。




『…俺、もっと強くなる』

「…」

『…負けてらんねぇ』

「…おう」



ふと、Aと目が合った。

ふわりと笑うAを見て思う。




(…それでもやっぱり)


…Aはこれからもずっと、俺にとって大切で守ってやりたい女の子だよ。




▨▨▨


「…アイツ、チョチョッて感じだったのに、今はグァッて感じだな」

『？？』

「？…何だよ」

『…お前何言ってんだ？』

「っんだとこのヤロウ！！」

『ギャアアアだだだだってお前がグワッとか言うからぁ』

「うるせぇこのボゲェ！！」

「コラ！影山ァ！日向ァ！」

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