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『…分かんねぇよ』
暫く経ってぽつりと呟かれたその一言。
淡々としたそれに、思わず血が滲むほど唇を噛み締めた。
そう言ったのは自分の筈なのに。
ただ酷く虚しくて。
「そう…ですよね」
乾いた笑いと一緒に何とか絞り出した言葉は掠れていて、自分の情けなさに、再び自嘲めいた笑みが漏れた。
『でも、一つだけ分かる』
ーーああ、俺、Aさんに見捨てられんのかな。
間近に迫ってくるぼんやりとした未来が、こんなにも怖い。
自分からAさんを拒絶するような言葉を吐いたくせに、Aさんの口から拒絶の言葉が出てくるのはどうしても耐えられなくて、俺はせめてもの抵抗とばかりにぎゅっと目を瞑ってその言葉を待った。
『…たろうちゃんはさ、優しすぎるんだよ』
静かだった水面にゆらりと波紋が広がるように、沈黙の中に落ちたその一言は、いとも簡単に俺の心を揺らした。
亜麻色の瞳が、ひたと俺を見る。
凜とした視線に射貫かれて、思わず眩暈がした。
俺が覚悟していたどれとも違う、その言葉。
理解できない、その言葉。
「…そんな事ないです」
俯いて否定する事以外、俺に何が出来ただろう。
『たろうちゃん』
俺を呼ぶ声は変わらず優しい。
優しくて、そして、
『…泣かないで』
「…ッ」
…酷く、残酷だった。
(…ねぇ、Aさん)
貴女は何で、こんな時に。
…そんな優しい目で俺を見る。
『ほら、』
ーーおいで。
そう言って腕を広げるAさんが、今まで見た事が無いくらい柔らかく笑っていたから。
俺は弾かれたようにその細い腕の中に飛び込んだ。
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雨音(プロフ) - @ あのせ。さん» わわ、嬉しすぎるコメントありがとうございます(≧∀≦)とりあえずハンカチどうぞ!!そして存分にイライラをぶつけてくださいませ!笑 じゅ、10回!?思わず笑っちゃいました(*´∇`*)熱量が伝わってきてとっても嬉しいです!ありがとうございましたT^T (2023年1月13日 15時) (レス) id: 9d08cd299b (このIDを非表示/違反報告)
@ あのせ。 - 感情移入しすぎてめっちゃ泣きました(泣)早く桃原殴りたいです(やめろ)とりあえずあと10回は見直してきますっ! (2023年1月12日 10時) (レス) @page35 id: 928e357de3 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - あずきさん» あずき様!!二度もコメント下さってありがとうございます(≧∀≦)続編ありがとうなんて嬉しすぎて泣いちゃう…T^Tそして追いコメントはむしろ作者へのご褒美ですな(๑˃̵ᴗ˂̵)あずき様が気持ちを抑えられなくなるように頑張ります!!! (2022年6月21日 22時) (レス) id: 9d08cd299b (このIDを非表示/違反報告)
あずき(プロフ) - わー!続編ありがとうございますー!気持ちを抑えられずまたコメントしてしまいました!照れ泉さんも男前泉さんもいいですよね。えっと、続編行っても気持ちが抑えられなくなったらコメントしちゃうかもです!続編でも作者様のペースで疲れないペースで頑張って下さい! (2022年6月20日 23時) (レス) @page50 id: 121db8bbe8 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - atchoさん» 同志…!!マッキーよきですよね(*´꒳`*)♡そしてそして嬉しすぎるコメントありがとうございます(T_T)そろそろお話が動いていくのでまた見てくださるととっても嬉しいです╰(*´︶`*)╯本当にありがとうございました!! (2022年6月2日 21時) (レス) id: 9d08cd299b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨音 | 作成日時:2022年4月28日 20時