絶望 ページ33
「ねぇ、あんたってほんっとウザいね」
練習後の体育館。ズカズカと上がり込んできたと思ったら、私を見るや否やそう吐き捨てた桃原に、訳も分からず顔をしかめた。
『…は?』
「悲劇のヒロイン気取り?全部自分が抱え込んで自分可哀想って浸っちゃってるわけ?」
『…急に何』
大きな舌打ちを落として腕を組む桃原を横目で見遣りながら、内心でまずいな、と独り言ちた。
不機嫌が最高潮に達している桃原は正直何をしでかすか分からないから恐ろしい。
何か気にくわない事でもあったのか、大分イライラした様子の桃原に、持っていたモップを壁に立てかけてから、正面に向かい合うようにして立った。
「うっざ」
『…』
「…それなら最初からあんたが大事にしてる青城の奴らを、あんたの目の前で潰した方がよかったのかなー」
『…』
「…おい、何とか言えよ」
人質を取られているような状況で、何を言えって言うんだよ。なんて面と向かって言えるわけも無い。
相も変わらず何も喋らない私にイラついたのか、桃原は大きな舌打ちを落とした後、握った拳を振り上げた。
「ああもうほんとアンタみたいなブス見てるとイライラする!…調子乗ってんじゃねェよ!」
…正直、喧嘩もした事がないような女子の拳を受け止める事なんて造作も無い。
私だって痛いのは嫌いだ。殴られてやる義理も無い。
その間0.1秒。単に避けるだけにするか迷った挙句、牽制の意味も込めて飛んできた拳をパシリと受け止めた。
目の前の整った顔が憎々しげに歪んで、そしてーーー
ーーーその時だった。
.
「…何、やってるの?」
…真っ白に染まった頭の中が、じわじわと侵食されていくような、そんな感覚。
咎めるような声に、全身から血の気が引いていく。
ゆっくりと目を見開く私の影で、桃原が嗤った。
マズい。見られた。終わりだ。もうダメだ。
頭を駆け巡る言葉はーー絶望、一色。
崩れ落ちそうになる足を叱咤して、なんとか声がした方を振り返った。
『スガ、ちゃん…』
「菅原さん…!!」
私の小さな呟きは桃原が彼を呼ぶ声にかき消された。
「よかった…!怖かったです…」
そう言ってスガちゃんに駆け寄る桃原。聞き覚えのある涙声。
ああ、相変わらず、
(…演技が上手いね、アンタは。)
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雨音(プロフ) - @ あのせ。さん» わわ、嬉しすぎるコメントありがとうございます(≧∀≦)とりあえずハンカチどうぞ!!そして存分にイライラをぶつけてくださいませ!笑 じゅ、10回!?思わず笑っちゃいました(*´∇`*)熱量が伝わってきてとっても嬉しいです!ありがとうございましたT^T (2023年1月13日 15時) (レス) id: 9d08cd299b (このIDを非表示/違反報告)
@ あのせ。 - 感情移入しすぎてめっちゃ泣きました(泣)早く桃原殴りたいです(やめろ)とりあえずあと10回は見直してきますっ! (2023年1月12日 10時) (レス) @page35 id: 928e357de3 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - あずきさん» あずき様!!二度もコメント下さってありがとうございます(≧∀≦)続編ありがとうなんて嬉しすぎて泣いちゃう…T^Tそして追いコメントはむしろ作者へのご褒美ですな(๑˃̵ᴗ˂̵)あずき様が気持ちを抑えられなくなるように頑張ります!!! (2022年6月21日 22時) (レス) id: 9d08cd299b (このIDを非表示/違反報告)
あずき(プロフ) - わー!続編ありがとうございますー!気持ちを抑えられずまたコメントしてしまいました!照れ泉さんも男前泉さんもいいですよね。えっと、続編行っても気持ちが抑えられなくなったらコメントしちゃうかもです!続編でも作者様のペースで疲れないペースで頑張って下さい! (2022年6月20日 23時) (レス) @page50 id: 121db8bbe8 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - atchoさん» 同志…!!マッキーよきですよね(*´꒳`*)♡そしてそして嬉しすぎるコメントありがとうございます(T_T)そろそろお話が動いていくのでまた見てくださるととっても嬉しいです╰(*´︶`*)╯本当にありがとうございました!! (2022年6月2日 21時) (レス) id: 9d08cd299b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨音 | 作成日時:2022年4月28日 20時