強くたっていい。だろ？４【青葉城西】

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「及川も岩泉も松も、今はそっとしとけなんて言ってたけど…俺は納得いかない」

顔を歪めた花ちゃんが、私の腕をバッと離した。
何が、なんて分かりきっているから、口を引き結んだまま花ちゃんの顔を見上げる。

怒気を孕んだ視線を真っ向から受け止めて、せめてもとばかりにその言葉に耳を傾けた。


「…俺はお前の幼馴染みでもねぇし、一緒にいたのだって三年間だけだし、喧嘩だって…いっぱいした」

『…うん』


…そうだね。最初、気が合わなくて沢山喧嘩したね。
その度にまつっちゃんかはじめちゃんに止められて。

ちゃんと話せるようになったのは、
花ちゃんが私の事を名前で呼ぶようになったのは、
ふと目が合った時、それだけで笑い合えるようになったのは、

…いつからだっけ。



「…でも、」


苦しげに目元に皺を寄せる花ちゃんの表情を見て、思わず眉を下げた。

ねぇ、花ちゃんのそんな顔、見たことないよ。
…似合わないよ、そんな苦しそうな顔。




「お前が俺らの事を迷惑だって、そんな事簡単に言える奴じゃないって事は分かってる」



真剣な瞳。真剣な声音。

…ばか。花ちゃんのばか。ぐっと唇を噛み締めた。

普段おちゃらけてばっかのくせに。
…いつの間に、そんなかっこよくなったんだよ。



花ちゃんが一歩前に出た事で、ぐっと縮まった距離に、
どんなに揺さぶられようとも負けるものかと睨み上げた先、至近距離で絡まった視線に、

思わず息を呑んだのは、どちらが先だったか。







ーーーと。その時だった。


「あれ？夏瀬さん？だっけ？」


校舎の影から、男子生徒数人がどこか怠そうに歩いてくる。
この数日で嫌でも見慣れた紫と、どこかで見覚えのある顔。

まじまじとその顔を眺め、そうして内心でチッと舌打ちした。
…私に水ぶっかけた奴じゃねぇか。


「…何だよお前ら」

「ん？夏瀬さんの知り合い」


怪訝そうな花ちゃんの声に、腕を組んだ一人が答える。
瞬間、ニヤニヤと卑下た笑いを浮かべるそいつらに、思わず背筋が粟立った。

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