恋【日向翔陽】 ページ14
「…この頃Aが他校の人とばっか話してる気がする」
目を見開く私に構わず、オレンジ色の髪をした彼はいじけたように唇を尖らせた。
▧▧▧
東京合宿も終盤。夕食も終わり誰もいなくなった食堂で、私は一人椅子に座りながらふぅ、と息を吐いた。
疲れも溜まり始める頃だ。今日も頑張ったなぁ、なんて自分を労りながら、肩を後ろにぐるりと回す。瞬間ごきりと響いた鈍い音に、思わず苦笑いが漏れた。
(…今日は早く寝よう)
そう思いながら、持ってきておいた個人の部活ノートを開く。この頃付け始めたそれに今日の事を書こうと、ボールペンを手にとってから多分五分くらい。
「…あ、」
静寂の中響いた一文字が、真っ直ぐに私の鼓膜を揺らした。
顔を上げると慣れ親しんだオレンジ色が食堂の扉口からおずおずと顔を覗かせていて、私はパチパチと数度目を瞬かせた。
『翔ちゃん』
「びっくりしたぁ、Aか」
電気そっち側しかついてなかったから、ただの消し忘れかと思った。
そう言ってパチリと入口側の電気も付けてくれた翔ちゃんにありがとう、と笑う。
「何してるの?」
近付いてきた翔ちゃんが机を挟んだ目の前に座る。ノートを閉じて、表紙を掲げてみせた。
「…“部活ノート”?」
『うん。自分なりに気付いたこととか忘れないようにまとめとこうと思って』
「へぇ!あれ、でもAそんなの書いてたっけ」
『ううん、この合宿から。雪絵さんとかおりさんがやるといいよーって教えてくれて』
「えっと、梟谷のマネージャーの先輩?」
『うん、そう。あとクロ先輩とか赤葦さんとかも』
その場にいて色々教えてくれた先輩達の名前を出すと、楽しそうに話を聞いてくれていたはずの翔ちゃんが何故か押し黙った。
首を傾げると、茶色の瞳がいじけたように見つめてくるから、更に首の傾きが大きくなる。
『ん?どうかした?』
じとっとした目と視線が合って数秒。
「…この頃Aが他校の人とばっか話してる気がする」
――発された言葉に、思わず目を見開いた。
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雨音(プロフ) - りこさん» いえいえ!どんなコメントでも嬉しいです(*´꒳`*)まだ先になっちゃうかもなのですが、よければまた見てください〜(о´∀`о) (2022年7月17日 13時) (レス) id: 9d08cd299b (このIDを非表示/違反報告)
りこ(プロフ) - 雨音さん» こんなコメントに返信してくださってありがとございます!及川さんエンドを満喫してきます! (2022年7月16日 22時) (レス) id: b102b9a411 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - りこさん» 及川さんエンドも書きたかったんですけど時間がなく…もう一つの作品で及川さんエンド書く予定なので、よければそちらご覧ください(>_<)すみません(´;ω;`) (2022年7月16日 20時) (レス) id: 9d08cd299b (このIDを非表示/違反報告)
りこ(プロフ) - 及川さん、、,! (2022年7月15日 21時) (レス) id: b102b9a411 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - きゃーぽんさん» コメントありがとうございます!!めちゃめちゃ嬉しいです( *´艸)また是非見ていただけたら作者喜びます〜〜!ありがとうございました\(^-^)/ (2020年11月1日 14時) (レス) id: 57a2e7dd63 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨音 | 作成日時:2020年9月22日 23時