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――時々ふと感じる疎外感。俺ら五人でいる時も、三人だけに通じる“何か”は必ず存在していて。
花も多分気付いてる。何だかんだ空気の読める奴だから。
気付いていて知らないふりをしている。
そうだよな。それが正しい。俺もずっとそうしてきた。
別に仲良しこよしやってる訳でもねぇし。一言で言う俺らの関係は部活の仲間。選手とマネージャー。
そこにあいつらの場合はさらにもう一つ、幼馴染み、という最強のワードがくっつくってだけの事。
…分かっていた。分かっていた、のに。
今日に限ってそれが無性に腹立たしくて、俺はぐっと唇を噛み締めた。
.
開いていた窓から吹き込んだ生温い風が、ふわりとカーテンを揺らす。
――刹那。閉じられた瞼が、ゆっくりと持ち上がった。
「A!」
瞬きを数回。Aは俺らの顔を見上げ、次いで緩慢な動作でベッドから起き上がった。
『…ここ、は』
「保健室だ。コーチが運んでくれたの覚えてるか」
『うん。…来てくれたんだ』
「当たり前でしょ!!Aと俺らの仲じゃん!!」
“俺ら”
その言葉に、思わず肩が揺れた。
…分かってる。お前らが五人でと言ってくれたとしても、及川、岩泉、Aは、やっぱりお互いが特別なんだって。
でも――。
(―――じゃあ、俺は?)
.
『…まつっちゃん、大丈夫?』
ハッと、顔を上げる。気づいたらAがこちらを見つめていた。
凛とした瞳は、いつだって美しい。
ただ今だけは真っ直ぐな視線に耐えられなくて、思わず天井を仰いだ。
…俺はガキかっての。
「……何が?」
自分でもよく分からない程のぐちゃぐちゃな感情なんて、絶対にバレるなと願いながら発した声は、どこか歪んでいた。自嘲したくなるのを何とか堪える。
…俺は何が気にくわないのか。
『んー、何か変な顔してたから』
変な顔…ね。
曖昧に肩を竦めてみせると、Aの眉間に皺が寄った。
一見すると不機嫌そうにも見えるこれは、誰かを心配している時の顔。
…なぁ。これが三年前の俺なら、そんな事きっと分からなかったよ。
確実に積み上げられた時間。十七年間生きてきたうちの、たった三年間だけど。
…俺はお前らに、少しでも近付けたのかな。
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雨音(プロフ) - コメントありがとうございますT^Tそんな嬉しいことを言って下さるなんて涙が…更新頑張れそうです(*´◒`*)猫様も体調気をつけて下さいね!本当にありがとうございました(*'▽'*) (2022年4月29日 19時) (レス) id: 9d08cd299b (このIDを非表示/違反報告)
猫 - まじでこの作品大好きです‼︎体調に気をつけてくださいね。 (2022年4月29日 11時) (レス) @page2 id: fd92b45f0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨音 | 作成日時:2020年7月25日 1時