＊ ページ30
『だーれだ』
ドリンクバーのボタンを押そうと指を伸ばした時。
背中にトンッと重みが加わったと思ったらそんな声が後ろから聞こえてきて、俺は思わず面食らった。
「…悪かったよ、付いてきて」
『それじゃ答えになってねぇぞ、はじめちゃん』
肩を竦めながら後ろを振り返ると、そこに立っていたのは予想通り過ぎる人物だった。
自分が持っていたグラスを置き、代わりにAが手にしていた空のグラスを取って、慣れた手つきでレモンスカッシュを注いでいく。
『…さっすが、はじめちゃん。よく分かってる』
注ぎ終わったグラスを渡してやると、Aはそう言って受け取ったそれを軽く揺らした。
並々と注がれていた白とも黄色とも取れないような液体がたぷんと揺れ、パチパチと弾ける炭酸が光に反射しながら上へ上へと上っていく。
Aが好むこのジュースは、まるでAのようだと俺は密かにずっと思っている。
透けるような明るい色も、気泡が弾ける心地良い音も。
…この、甘酸っぱいレモンの香りも。
『んで？はじめちゃんがいるって事はアイツらもいるって事だよな』
そう話しながら、Aが横においてあった俺の空のグラスにコーラを注いでいく。
ああ、と一つ頷いてから、「お返し」と悪戯っ子のような笑みと共に差し出されたグラスを「サンキュ」と受け取った。
「…アイツらいじけててすげぇ面倒くさいんだが」
『毎度毎度お疲れ様。うちの部活ははじめちゃんいないとほんと回んねぇな』
そう言って笑うAを見つめ、少ししてから俺は口を開いた。
「なぁA、一つ聞いていいか」
『ん？どしたの』
はじめちゃんなら何個でも大歓迎。そう付け足したAに思わず頬が緩む。
聞きたい事。
…そう、一つだけずっと気になっていた事がある。
「…飯行くなら全員で行こうってAなら言いそうだと思ってな。いつもならしょうがねぇっつって折れるお前が、付いてくるなと今回ばかりは譲らなかった」
何でだ？
そう問えばAは軽く目を見開いた後、苦さを滲ませた顔で笑った。
『…はじめちゃんってほんと、何て言うか、さすがだよね』
何の事か分からず首を捻ると、そんな俺を見てAは「やっぱりはじめちゃん好きだわ」とそっと目を細めた。
『…話をゆっくりするために、ご飯に誘ってる』
そう切り出したAにそりゃそうだ、と思いつつも、視線で話の続きを促す。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 679人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雨音(プロフ) - コメントありがとうございますT^Tそんな嬉しいことを言って下さるなんて涙が…更新頑張れそうです(*´◒`*)猫様も体調気をつけて下さいね！本当にありがとうございました(*'▽'*) (2022年4月29日 19時) (
レス) id: 9d08cd299b (このIDを非表示/違反報告)
猫 - まじでこの作品大好きです‼︎体調に気をつけてくださいね。 (2022年4月29日 11時) (レス) @page2 id: fd92b45f0d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雨音 | 作成日時：2020年7月25日 1時
