6(you side) ページ6
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you side
うるさっ。
こんなことになるなら、前から2列目以内の席を希望すべきだった。
昼休みの半ば頃になって、左隣の列の私の隣の席に集まった集団は、ここのクラスの陽キャたちよりも目立っている。
高身長の男子4人に囲まれているうちのクラスの、松村。
ちなみに、松村の席に無理やり座っている一人もわりと高身長。
横目で何回か松村を見てみたけど、嬉しそうに笑顔を浮かべていた。
松村ってこんな表情するんだ、と思った。
この5人が来るまでは、世界の終わりみたいな絶望感と失望感が溢れ出ていたくせに。
私は彼の名前を去年から知っている。彼に会いにきた5人の名前も。
知りたいと思っていなかったけど、勝手に耳に入ってくるクラスメイトたちの会話で知った。
ハーフでモデルみたいなジェシー、女子みたいに綺麗な顔をしている京本大我、笑顔に愛嬌のある高地優吾、がっちりとした体格の森本慎太郎、チャラい田中樹。
そして、その5人とは異質な雰囲気の松村北斗。
1年生のとき、私がいたクラスの2つ隣のクラスだった彼ら6人は、入学してすぐに話題になっていた。
でも、最初は松村以外の5人だけが話題になっていた。
イケメンがいる、って。
夏休み前くらいになると、そんな話題の中に松村が加わった。
「6人の中だったら誰がいい?」
「えー、田中くんがいいかなあ」
「田中くんってチャラいらしいよ」
「ジェシーくん面白いらしいし最高じゃん?」
「京本くんは女子よりも顔綺麗すぎてなんか異次元の存在って感じ」
「森本くん彼氏にしたら絶対最高な彼氏になると思う」
「高地くん優しそうじゃない?」
「松村くんもかっこいいけど、なんか近寄りがたい雰囲気だよね」
そんな会話が日常茶飯事で、私はこれが女子高生ってやつか、なんて思って呆れていた。
男子は男子で
「昨日ジェシーと遊んでさあ!」
「慎太郎のインスタ、マジ面白くね?」
「今度樹に女子紹介してもらうんだけどさ」
「高地とサッカーしたんだけどさ、マジ上手くてビビったわ」
「京本と一緒にライブ行こうってなっていてさ」
とか声を大にして彼らの名前を言って、彼らと繋がっているのを自慢するかのように話していた。
でも、その中に松村はなかった。
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作者名:雨中遊 | 作成日時:2021年7月19日 17時